炭火生存日記

しぶとく生きるためのブログ

平等で妥当な現実(2020)

過密日程、COVID-19による感染へのプレッシャー、観客数の制限など、数多くのイレギュラーに見舞われたシーズンでした。本当に大変な一年だったと思います

 

まず、名古屋にグランパスに関わる全ての方々が今回の目に見える様々な結果により少なからず報われて何よりです。残ったものは何もないがとにかく頑張っただとか、よくわからない形のないものに縋りながら負けん気だけは日本一だとかの敗走でなく、シーズン通して継続し続け、確かな結果を勝ち取ったことが何よりも素晴らしいです。

 

2位になれなかったことについては、今一つであった試合を思い起こせば出てきますが、つまるところガンバさんを直接叩けず、二度にわたって最後に失点してしまったことが全てでしょう。

しかしそれは、ここ数シーズン幾度となく語られてきた成長の余地であり、漸く成長や進化を口にできるスタートラインに立ったのだと思います。ここから、無失点試合を18,19としていく方向に舵を切るのか、16,15となったとしても主体的にボールを保持できる隙のないチームを目指していくのか、さらに上を目指すための挑戦が始まります。

今年以上の過密日程・選手層・怪我・強度の維持などまだまだ不透明なことや不安も多いですが、さんざん夢を見ることを望んだ方にとっては珠玉のシーズンになったのではないでしょうか。

 

昨年までとは打って変わって、シーズンそのものはきわめて異質であったものの、内容を振り返れば普通のものでした。試合内容に応じて勝手に妥当な賞賛も批判も集まり、終わってみれば一度きりの連敗に対しても当たり前のように重く受け止める声が上がっておりました。(何度連敗しても根強くあった半笑いと諦めとキラキラの混じった抒情詩はどこ行ったんでしょうかね)

ただし、様々な声が上がること自体は自然です。

試合内容が良ければ称賛され、整備された組織の中、ユース上がりの若武者が躍動すれば期待の言葉は出るでしょう。脂ののった経験十分な選手たちを起用し続け、ろくでもない結果しか出ず内容も乏しければ批判されるでしょう。それもプロである以上ある程度起こり得ます。 

明らかな罵詈雑言や誹謗中傷を除けば、大なり小なりどこのクラブさんでもあることです。別に名古屋限定の話ではありません。

折角なので、以下にいくつか印象深い具体例を記します。

 

FC東京さんとのルヴァンカップ準々決勝

過密日程の中リーグ戦に集中できる、みたいな言い訳の一つや二つあってもよいのに、普通に試合内容に関する不満が起こっておりました。内容自体は低調で、勿論発生しておかしくないものです。

 

横浜FCさんとのアウェイゲーム

相手が良かったとか、運が悪かったみたいな言い訳があったもよいのに普通に内容に関する不満や、守備できるのはわかったから本当に現状維持でよいのかみたいな謎目線が発生しました。幾度となく崩されて失点したのは事実であり、こちらも発生してもおかしくない不満です。

 

コンサドーレ札幌さんのとのアウェイゲーム 

最後のPKをランゲラック選手が見事に止め、薄氷の勝ち点1を得た試合ですね。この試合も札幌さん相手にしっかり勝てなかったことに対する不満が出ておりました。一年前を思えば勝てなかったことに文句が出るなんてずいぶん遠いところまで来たな、という懐古の一つや二つあってもよさそうなものでしたが、特にそんなこともありませんでした。

 

・大分さんとのホームゲーム 

勝たなければいけない試合でリスクを取りきれず、取りこぼしたという認識に覆われた試合でした。ただし、結果的には勝てなかったものの、クラブ全体に最後までハードワークを続ければ何かを起こせるというポジティブさが定着した瞬間でもありました。

湘南さん・FC東京さんとの試合を経て何かを起こしてきたという、まさしくチームとしての積み重ねを実感できた試合でした。

 口で90分間戦い続けるというのは簡単ですが、実際なかなかできることではありません。いかに選手がプロフェッショナルであるとはいえ、報われるかもわからないワンプレーのためにハードワークするのは間違いなく肉体的にも精神的にも厳しいことでしょう。勝利の女神は細部に宿ると言われますが、知っているのと実際にやることできること、実際にやり続けることには天と地ほどの差があります。

それでも実のあるハードワークを続け、報われて結果として確かに遺してきたものがあるという自負を選手とスタッフ・サポーターが共有できた瞬間がありました。マテウス選手が最後のコーナーキックで場内を煽り、それにサポーターが呼応した瞬間がありました。結果的には大分さんとの試合では実りませんでしたが、これをまさしく継続とか積み重ねと呼ぶのではないのでしょうか。

そして、大分戦の反省を活かし、見事に相応のリスクを冒し広島さんへのリベンジを達成しました。無失点を更新し、きちんと勝利しきったのも非常に素晴らしいことです。自他クラブを問わず、口ではいつも通りと言いながら緊張などで浮足立ち、他人行儀なプレーに終始したクラブを幾度となく観てきましたが、同じ轍を踏まなかったことも本当に素晴らしいの一言です。

贔屓目は勿論入りますが、3位で今季リーグ最少失点かつJリーグ無失点記録タイというのは、ハードワークが実を結んだ平等で妥当な現実ではないでしょうか。

同時に、川崎さんの10連勝を止めた試合をはじめとして、記録だけでなく記憶に残る試合もございました。一試合の垂涎の瞬間をことあるごとに啜り、芳しくない結果が刻まれるたび浸ることもあり得ましたが、幸いにもそうはなりませんでした。最高到達点を一つの過去としてしっかりと決別し、前進できるようになったのです。

現状維持ではいけない、と楽観視せずチームを追っていらっしゃった方々としても納得のシーズンになったのではないでしょうか。我欲を申し上げれば、そういった自戒は2年前に聞きたかったです。

 

 

非常に心穏やかです。まず、シーズンをきちんと終われてよかったです。そのうえで、関わった方々・戦い続けた方々の努力が報われる結果が出てよかったです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もはや大して話題にもなっておらずどっちでもよいのですが、遺産はあるか問題について一応見解を記します。

 

答えは簡単で、ありません。理由としては、様々な視座でここ数年の名古屋を追いかけてきた方々の意見が揃ったからです。

フィッカデンティ監督が何もかも壊してしまった、と風間氏のサッカーを研究してきた方々が昨年度口をそろえて仰っていたこと。

・所謂アンチ側も何も残らなかった(そもそもなにも積み上げてないから)と認識したこと。

つまり、対極な見方でシーズン通して同じチームを追いかけていたサポーターの認識が一致しており、今までの建造物が至宝の宮殿か伝説の城郭かサクラダファミリアかバベルの塔か砂上の楼閣か蜃気楼かという差異はあれども、更地になったという認識は一致したわけです。

どちらも見る目がなかったという可能性もありますが、まぁ風間氏のサッカーを真摯にご覧になり続けてきた方々がなくなったと仰ったなら、やはりなくなったのでしょう。その辺は目の揃った方々ですから信頼して良いと思います。

何より、結果が出たから実は遺産があったなんてさすがにそんな厚顔無恥なことはできないと思います。

一回完膚なきまでに壊されたはずの遺産が、COVID-19によるイレギュラーな中断と相まってどうやって掘り起こされるのが原理がわかりません。監督交代直後であれば前監督の色が残るというケースはあり得ますが、半年中断したにもかかわらずいきなり掘り起こされる遺産なんてどうすれば存在できるのでしょうか。

 

個人的には今更あってもなくてもどうでもいいです。あれば遺産を活用して成長している選手と遺産を作ってくださった前監督ときちんと引き継げる現監督を評価すればよいだけで、なければやっぱりそんなものないよねで終わりです。それ以上でもそれ以下でもありません。 

 

続いていたら「今年は何もかもイレギュラーな年だったから評価しようがない、参考記録でしょ」とかいういつもの先延ばしと言い訳が跋扈しただけじゃないですかね。おお怖い怖い。ただそれももはや過去の幻影です。

 

 未来を語るのも同様です。

10代や20代前半の選手が単に起用されるだけであればそう難しいことではなく、異常な過密日程となった今シーズン多くの他クラブさんで見られた現象です。

勿論名古屋でも成瀬選手・石田選手をはじめとして起用されておりました。

ただ、起用=継続ではないですし、数試合ルーキーが活躍したからといってバラ色の未来が続くわけではないことはこの4年間で嫌というほど痛感していることでしょう。

・そもそも出場できるか

・出場して爪痕を残せるか

・次の出場機会はあるか

・継続して出場できるか

・相手チームが対策してきたとき、その対策を超えられるか

 これだけの壁を最低でも越えていく必要があります。こちらも継続あってこそですね。

  

今年普通のリアクションが出れば出るほど、いかにここ2年が不穏で異常であったかが浮き彫りになるだけですね。さすがにACL圏内+クラブ新記録の無失点記録と未だ見果てぬ夢を比べればどちらが魅力的かは判断しやすいと思えるのですが、自分の応援するクラブのことになるとどうしても目は曇ってしまいます。自分自身も勿論逃れられません。

他クラブさんのサポーターの皆様からの反応を観ればどちらが戦う相手として厄介なのかは一目瞭然です。

 勿論、焼き畑農業の如く、目先の小さい利益をとって根を涸らし数年後に埋没していくという現象は起こり得ますが、一方で生え抜きを育てれば未来があって安心というのも時代錯誤甚だしく、結論のすり替えであるように思います。優秀で将来有望であればあるほど、買われて旅立っていくと認識していたほうが現実の移籍事情に即しており、精神衛生上もよいと思います。どちらが正しいのかはわかりません。ifの未来を観測できない以上、遡及的にあとから正しかった/間違っていたことにするしかありませんからね。

輝かしい未来と現在の結果にどのくらいの因果があるのかは何とも言えませんが、育ち切ったところで収穫するのは他クラブだったというケースはあり得ますし、それを受容できるサポーターの精神も育むのには時間がかかります。少なくともここ数年の阿鼻叫喚ぶりを見る限りでは、まぁまだその土壌はないでしょうね。