堅実か不足か
勝って決めたかった、というのが正直な感想です。あと2戦の相手を考慮すると余計にその思いが強まります。
ただし、今後負けなければ確実に残留が決まる段階にはなりました。
良いところは継続して悪いところは修正しようとよく言われますが、往々にして良いところというのは悪いところの裏返しです。そうそういいところだけ伸びるものではありません。
今のチームで言えば、守備時のリスク管理がまずは徹底され、ピッチ中央に謎のセキュリティホールが生まれることは大きく減少しました。それに伴い、安っぽい失点は確実に減少しています。その一方、攻撃時には相手の準備された守備を上回る攻撃がなかなかできておらず、得点数は前節の神戸さんとの試合を除けば今一つです。丹念に二年半磨いたはずの技術やら巧さやらも不思議なことになかなかお目にかかれません。本来、監督交代くらいで錆付いて消え失せる性質のものではないはずですが、妙なものです。
現状はボール非保持時の陣形に重きが置かれており、もう少し丁寧なビルドアップとロジカルなボール前進に主眼を置いたチューニングを期待したいところですが、今までなかったものをいきなりシーズン途中から植え付けるのは難しいでしょう(それを成し遂げる名将は勿論いらっしゃいますが…)。いずれボールを主体的に保持できないと相手に持たされるだけなので、クラブの方針としても優先度が高い技術のはずです。はずなのですが…。
今日で就任から丸2か月なので、個人的にはあと1か月足りなかったという印象です。
たらればになりますがあとひと月あれば、多くのサポーターが夢見るような流麗なビルドアップが整備されなかったとして、時間がなかったせいなのか、移籍で選手が去りすぎたせいなのか、それとも監督が手腕を持ち合わせていないのかの答え合わせはできたと思います。明確なプランを持った監督(コーチを含めたチーム)であれば、3か月間でプロフェッショナルとしてピッチ上に落とし込んできますからね。
今更たらればを語っても仕方ありません。確実に残留を決め、内省すべき事項をシーズンオフにたっぷり振り返ったついでにぽえむに耽ればよいでしょう。
しかしながら、あと一つ勝てばよい名古屋に次節目の前に立ちはだかるのは、ここ数年ある程度お得意様としてきたかつての磐田さんではなく、名古屋同様今シーズン中にカリスマ全力路線と決別した手ごわいクラブさんです。
偉大なカリスマ性を有した監督が時と場合によっては必要不可欠で、クラブとして頼らざるを得ないフェーズもあるのでしょう。
しかし、その代償は大きいです。人間的魅力にあふれカリスマ性があり、チーム内の雰囲気が良好で話せば素晴らしい人格者であったとしても、ピッチ上で選手の頑張りが無駄に終わり、成績は芳しくなく、続く試合で改善の兆しが見られず、「あのチームはこうしときゃ勝ち星くれるしヌルい」と他クラブさんに思われてしまうのであれば、やはり早いうちに袂を分かつしかありません。クラブの目標が「まったりやる」ならむしろ適任でしょうが、そのようなプロクラブは私の知る限りではございません。
主体的に攻めることを継続してできるチームを作り上げるのであれば、最後尾からボールを前進させるロジカルなビルドアップは必要でしょうし、奪われたボールをどう取り戻すかまでも一括りです。
そういったロジカルな先人たちの歴史の蓄積を礎としたうえで、名古屋らしさなどを追い求めるのであればそれはクラブ独自の判断となるでしょう。きちんと歴史に学び、実行したうえでらしさを追求するのはむしろ妥当に思えます。
結果として一見同じに見えるサッカーがピッチ上に出力されたとしても、全員が確信をもって意思疎通したものと、個人の閃きでたまたまそうなったのとでは天と地との差があります。一試合の最高の数分だけを切り取っても決してわかりませんが、シーズンを通せば明らかになります。だからこそ継続性が大切なわけですね。
(どこまで我慢ができるかはともかく)そんな継続性に向けてひとまず舵を切った両チームですが、磐田さんが劇的な勝利で勢いに乗る一方、名古屋は文字通り満身創痍です。それでも自分たちで残留を決められる状況ですから、何とか判定に頼らず自力で勝ち取り、ここ数年の蟠りを払拭していただきたいものです。
数年前まではまだ漫然としたシーズンを過ごしてもなんとかなりましたが、今やあっと言う間に降格の憂き目に晒されます。今シーズンは同じように漫然とした判断をなさったクラブさんが幸運にもいくつかありましたが、来季も続くとは思わないほうが良いでしょうね。
了
豊スタの入場者数が3万人いかなかったことで心配するふりをしていらっしゃる方々がそろそろ現れ始めたようです。予想より早い登場でしたね。
一昔前から比較すれば本当に贅沢な不満を言える境地に至ったなと痛感します。営業を始めとした多くの方の尽力があって、新規の方のご入場回数を0回から1回にする段階は難しさを考慮してもかなり順調にクリアできたと感じます。
同時に、極端に言えばとにかく販促をかければよかっただけの営業から、1回を2回、2回を3回にするためのフェーズへと移行していきます。財布から出る金銭も併せて増加するでしょうし、定着というミッションはまた別の難しさを伴うでしょう。当然、新規の方が増えるということはスタジアムの雰囲気も穏やかになりやすいでしょう。自分の庭の如くいきなり大声を出せる方々のほうが少ないですし、「来たからには郷に従え」というような、観戦スタイルを選ぶような方針をクラブは取っていないはずです。
つまり、「新規と古参の折衷・すり合わせ」「新規の定着」「古参の優遇」「利益の獲得」といった、一見矛盾するが両立しなければならない課題に名古屋も勿論ぶち当たります。他クラブさんも間違いなく苦悩していらっしゃることでしょう。
いかにして満員のスタジアムを継続するかというのはいずれ向き合わなければならない問題ですし、クラブは時間をかけてでもいずれ解決してくださるとは信じております。
しかしながら、今シーズンの背景を含め、まぁ現状を揶揄するうえでオイシイ話題なのは確かでしょうね。
今後もベストとワーストを比較して批判されることでしょう。溜飲を下げる以外何の意味もない比較ですが、それで十分です。それが代償のうちの一つです。
そこについてはフィッカデンティ監督が悪いというより、いかにして風間氏から引き継ぐかを想定し、準備しきれなかった首脳陣の瑕疵でしょうね。貫くと言いつつ、貫くための手段・実行のためのカードは貧弱だったという批判はされてしかるべきでしょう。
いい監督を招聘することで上向くことはありますが、そこに一貫性がなければ、ただ監督ガチャに当たっただけにすぎません。そこに継続性や一貫性は一切なく、目指すスタイルの蓄積などあり得ません。継続性や一貫性という言葉が真の目標のための言葉でなく、単なるダシであればまた意味合いは変わりますがね。