炭火生存日記

しぶとく生きるためのブログ

いつも通りに、3%はまた終わる

名古屋の負けていない夏です。

言い換えれば、勝ち切れない夏です。

しかも、絶好調の相手を叩きのめす勢いある夏というよりは、順風満帆とはいえない他クラブさんを相手に、何とか勝ち点を積み上げているという夏です。湿っぽいですね。

 

とはいえ、いつも通りの試合でした。手も足も出ないレベルでに嵌められていたわけでも、信じられないくらい相手GKが当たっていたわけでも、自分たちがどうしようもなく不調だったわけでもありません。いつも通りやって、いつも通り失点したのみです。そして、相手にとって一番嫌なことを徹底すれば驚くほど簡単に点が取れるのも、さすがに「いつも通り」とまでは言えませんが今に始まった光景では決してありません。

 

結果と内容が理想と程遠く、別に面白さもない点を除けば安定感と継続性のある「いつも通り」を確立できています。いつも通り何となくパスが回り主導権を握っているっぽい状態ができ、攻めている雰囲気が醸し出されています。このほわほわ感はなかなか他クラブさんには出せないですね。

 

こうした「いつも通り」の継続性は風間氏の手腕によるものだと思います。相手が変わっても、選手が変わってもなお継続しているので、氏の手腕によって名古屋に落とし込まれたものとしてよいのではないでしょうか。

 

ところで、「いつも通り」はいつまで続くのでしょうか?

いつも通りと言いつつ、しれっとピッチ上でできることを淡々と増やして、気づけば真ん中を閉鎖してくる相手にも柔軟に対応できるようになっていたら、確かにいつも通りで何の問題もありません。むしろ「いつも通り」をもっと貫いてほしい、と強く願えます。

 

ところが、「いつも通り」は本当に変わりません。悪くも悪くもいつも通りです。

そういう意味では、「いつも通り」と言って変化のない状態になっているので、有言実行ではあります。やっていないことはできないので、きわめてロジカルですね。

理想がACLを制覇できる勝てるサッカーなのか、相手にボールを渡さないサッカーなのか、手段を問わず仕留めきる攻撃サッカーなのか、勝てなくてもペナルティエリアに選手が殺到するサッカーなのか、川崎さんになることなのか、攻めている雰囲気サッカーを極めるのか、未だに理想の形さえ定まっていません。理想が決まってないので、至り方も定まりません。

北海道に行くかイギリスへ行くか近所の公園に行くかも決まっていないのに、使用する交通機関は決められません。時間をかければ闇雲に進んでもいつかは到着するでしょうが、相応の代償は支払うことになるでしょう。時間は平等です。

 

とはいえ、さすがに理想のためのキーワードが一切ないわけではありません。ボールを運ぶとか、大切にするという表現は共通して登場します。

ボールを大事にするチームであれば、下記のような現象は見られます。まして、技術を磨いているのですから、狙った現象を起こそうとしたがミスをしてしまったということは少なくなるはずです。そのための技術ですからね。

 

・文字通りボールを易々失わない

・失うとしても、失いやすい場所が決まっている(チームとして相手の監視の目を潜り抜けるためのリスクを冒す場所が決まっている)

・失ったとしても、すぐに取り返す

受け手がもらった瞬間の状況は、出し手がボールを渡した瞬間より原則改善された状況になっている

 

実際どれも不可欠なのですが、特に最後の要素はボールをゴールまで運ぶことを継続するのであれば欠かせません。

なぜなら、ボールを次の選手へ「お願いします!」と爆弾のように渡していくと、いずれ誰かが無茶せざるを得ない状況へ追い込まれるからです。だんだんとスペース・有利なボディアングル・視野を奪われ、可能性の低いカードしか気づけば手札には残っていません。勿論、非常に能力の高い選手たちが揃っておりますから、時には何とか出来てしまうこともあります。何とかできなければ、大切にしたいはずのボールは相手の足元に転がります。

「ボールが大切だ」「足元にボールがあれば失点しない」というのは言葉では散々耳にするのですが、断じて運び方が失ってはいけない大切なもののそれではないのは何故でしょうかね。大切なものを運びたいのならそれに応じた運び方とか、失いやすい場所のチェックやらは準備しておきませんか?

それも、開始数か月のチームでもないですし、カウンタースタイルからの大転換を図って試行錯誤しているチームでもありません。選手がやりたいスタイルにあまりにも合致していないということもあり得ません。

もう「やれない」要素は一見残っていないのですが、なぜかやりません。

(やらないのかやれないのかはシーズン終了後に答え合わせできるでしょう、正直これも重要で大切な3シーズンを賭けてまで自クラブでやるレベルの答え合わせではないのですが)

 

 こうして、大変ありがたくない話ではありますが、少しずつ少しずつ、34分の1を終えています。次の試合にまたできればよいと語るうちに、貴重な実戦時間は3%ずつ終わっていきます。先週こそ川崎さんには快勝しましたが、等しく1/34を制したにすぎません。

川崎さんとの試合が相手の勝ち点をすべて奪える試合なら川崎さんとの試合を集大成にしてもよいのですが、勿論そんなことはありません。シーズン途中に勝手にゴールテープを切って燃え尽きても仕方ないのです。

 

こうした漫然とした浪費は、主体性や能動性とは対極にあります。相手があるスポーツなので勿論相手に左右されるのは当然ですが、相手に自分たちのスタイルを押し付けて変化を強いるはずが、スタイルに対応してくる相手に変化もできず受動的になるのは相変わらずです。こんなありがたくない「いつも通り」を貫き通す継続性こそが真の理想であるとするのなら、もはや何も言うことはありません。

ピッチ上の現象を説明しようとしたポジティブな願望に対して、大抵の反論はすでにあらかた書き終えました。ピッチ上においては、幸運な未来がいきなり降ってくることはなく、今現在の延長にあるものです。今現在ボールを大切に運べておらず、大切に運ぶために特別に何か工夫している様子もなく、将来的に大切に運ぶための技術・認知に投資しているわけでもなければ、おそらく未来でもボールは大切に運べないでしょう。

口酸っぱく言われる「いつも通り」の中に、大切にボールを運ぶための共通理解・実践に足る技術は含まれていないのですから。含まれているのであれば、とっくに慧眼をお持ちの諸兄がこぞって指摘なさっているはずです。この現象こそが目が揃っていることの証左だと、継続性の証左だと様々な媒体でわかりやすく伝えられるはずです。

 

国内の移籍市場は閉まり、期限付きで頼れる選手たちを失った現在の体制から大きく変化することなく、今シーズンは駆け抜けることになるでしょう。太田選手の加入が発表された時点では、今年も補強の夏になるかと思われましたが、むしろ出場機会を求めて期限付き移籍を果たした選手たちが多く、一か月前の予想とは異なる夏となりました

あらゆる選手において、試合に出なければ、市場価値が上がることも劇的に能力が向上することもまずあり得ません。そういう意味では、かつて名古屋が他クラブさんから多くの選手を誘ったように、同じことを時を経てされる側になっただけの話です。

 そこに魅力だのクラブ愛だのをいくら語っても仕方ないでしょう。そして、もはや出場機会を得られる環境でもなくなり、出場機会を得られず去った選手を膨大に出した以上、移籍交渉で苦戦するのは必然です。

 

前体制の咎を掃除している段階でもありません。すべては因果ですね。