炭火生存日記

しぶとく生きるためのブログ

長く忘れていた感覚

待ちわびた勝利です。

残留に向けて大きな勝ち点3です。一試合早く残留を決めれば、一試合早く来季へ向けて動き始められます。結果が最も重要な時期に、結果が出たことが何よりです。

 

 

 

とはいえ、たった一試合で急にフィッカデンティ監督が神になるはずもありません。

重要な一試合ですが、一試合は一試合です。

 

名古屋にとって物理的にケアが難しい、神戸さんの左右のCBからのビルドアップの質が試合の行方を分けることになりました。名古屋がそのエリアを捨てざるを得なかったのか、意図的に捨てたのかまではわかりかねますが、とにかく捨てたエリアを積極的にボール支配の休息場として利用されなかったことで一工程ずつずれが起こり、脅威となる選手たちが数珠つなぎに名古屋ゴールから遠ざかっていったことが大きかったです。フェルマーレン選手が不在だったのは正直ツキがありました。さすがに現役ベルギー代表不在の穴を埋めるのは難しいですよね。

とはいえ、ジョー選手一人の激烈でもないプレッシングを前に、山口選手やイニエスタ選手までが最後尾まで落ちてしまうというのは、正直神戸さんの自滅もあったのではないでしょうか。名古屋攻撃陣の個の力を勘案しても、リスクを負って早いうちにDFを一人削ってサンペール選手を投入されるほうが個人的には嫌でしたね。

加えて、最初のチャンスで先制点を確実に獲得できたのもかなり大きいでしょう。場面そのものを創出した時点で勝負ありの2点目とは異なり、得点できなくても仕方のないチャンスではありました。長谷川選手が諦めずに空中で折り返したのが分岐点でした。あれをゴールキックだったと断言できる人類はいないことでしょう。真横から見てもわからないかもしれません。

90分間タスクをきちんと徹底することに派手さや煌びやかさはありませんが、手堅く隙は少なく、相手にとって厄介なチームではあったと思います。

 

しかしながら、依然就任後1勝のみであることは事実です。選手が迷子になったかのような謎のセキュリティホールはピッチ上から徐々に消えてはいますが、ジョー選手が相手に競り勝つこと前提でボールを前進させているのは気がかりな点です。

ジョー選手の調子が良く、正当に判定して頂ければこの手法は効果的だと思いますが、正直クリーンとは言えない相手守備の前に、ファールを取ってもらえないこともあり得ます。現在取り組んでいる守備時のセットされた布陣整備とともに、いずれボールが足元にある際も同様のロジカルなボール保持を拝見したいところですね。

 

今後つまらないという声も当然出るでしょうが、個人の主観で生じてもおかしくない感想ではあります。ただ、攻守一体を実現するのであれば遅かれ早かれ一度は通らなくてはならない道です。やりたいことだけやって理想に至れるのであれば他クラブさんも皆そうしているでしょうが、実際そうなってはいません。(今シーズン散々学びましたね)

 勿論魅力的な攻撃サッカーをピッチ上に表現しながら守備まで整備できる鬼才もいらっしゃるかもしれませんが、そう都合よく就任していただけるとは考えにくいです。

 

勝てば名将・負ければ戦犯とばかりに一喜一憂を繰り返す風見鶏のような批評を繰り返す楽しみ方もありますが、それこそ結果に依存してしまいます。34試合あれば、相手が自滅することもありますし、相手が退場することもありますし、判定の妙で敗北することもあります。継続性を判断するのであれば、一試合最高の試合をしたかどうかより、34試合やって、約3,060分間のうち、どれだけ自分たちの思惑通りにゲームをコントロール出来ていたのかのほうがはるかに重要です。

最高の試合があるに越したことはありませんが、継続性を掲げるのであれば、瞬間的な煌めきというのは寧ろ対極にあるものです。

 「いかにして目標に近づくためのアプローチを継続するか?」が重要です。いくら陸でクロールのフォームを完璧にしても海で泳げるようにはなりませんし、練習でロングパスを使わなければ、本番で使えるロングパスは出ません。

 

では、フィッカデンティ監督で何を継続しているのかという話ですが、正直わかりません。そもそも、どんなタスクを果たす仕事人として招聘しているのかがわかりかねます。監督に課されたタスクとしては残留なのか、攻守一体の実現なのか、攻守一体実現のための基礎工事なのか、そんな意図はなくとりあえずJリーグで実績あるフリーの監督だからなのかもわかりません。

たとえ残留できたとしても、今季を含めたここ数年の意思決定とそれに伴うアプローチを振り返ったうえで前進しなければ、また同じ過ちを繰り返すことでしょう。今年は過ちを一緒に冒す他クラブさんもいくつかいらっしゃいましたが、果たして来年はどうでしょうか。

 

 

そうはいっても、3か月遠ざかっていた勝利の味です。

長く忘れていた、次の試合ではもっとできることが増えているかもしれないという期待・希望を胸に、中断期間を迎えられることを今は喜んだほうが良いのかもしれません。結果増えない可能性も当然ありますが、その時は正当に批判されることでしょう。