炭火生存日記

しぶとく生きるためのブログ

3年目の継続と理想と展望と

 

名古屋グランパスが一度崩壊してから、早いもので、あっと言う間に3季目を迎えようとしています。

 

全てを失ったと思った降格も、自動昇格が果たせず紙一重で帰還を果たした昇格も、最悪の連敗トンネルを歩みながら個人の頑張りと豪運で残留を果たした昨季も、もはや過去のこととなりました。移籍市場に尾を引くと思われたギリギリの残留にもかかわらず、強化部の仕事ぶりのおかげで監督と思惑の一致した補強・慰留に成功したといえるでしょう。(それでも玉田選手を放出した理由は正直未だにわかりません、どうやってシャビエル選手に依存せずに前線と中盤のボールを繋げるつもりなのでしょうか。きっと考えがあるのでしょう。)

そうした振り返りもする暇もなく、すぐに開幕はやってきます。プレシーズンマッチでは不安がよぎるスコアも垣間見えましたが、まぁコンディションがこの時期に仕上がっていてもおかしな話です。あくまで練習試合にすぎません。

 

ただし、今季はもはやゼロからのスタートには程遠いです。一年目は「初めてのJ2・監督一年目の指揮・選手の大幅な入れ替え」という文字通りゼロからのスタートでした。昨季も、個人的にはJ1を戦えるメンバーは十分開幕時点で揃っていたとは思いますが、帰ってきたJ1は個人能力で踏みつぶせるほど甘い舞台ではありませんでした。なんとか前半戦を使ってJ1のレベルを学び、夏の移籍期間で残留を躊躇なく買いに行った結果、ぎりぎりで残留という結果を間に合わせることができました。

最大限好意的に解釈すれば、J1で戦うという点ではゼロからのスタートだったとも言えます。一方、否定的に解釈すれば、選手をチーム内でJ1レベルに上げられず、外注に頼らざるを得なかったとも言えます。幸運にも今季をJ1の舞台で戦えますが、その実態は過去2シーズンとも夏移籍のブーストで帳尻を合わせたにすぎません。

今年は選手の大幅な入れ替えもなく、層が薄かったポジションにまんべんなく優秀な選手たちがいらっしゃいました。失ったものも大きいオフシーズンでしたが…。

とにかく、ゼロからのスタートではないわけです。いかに継続したものが蓄積し、結果やピッチ上・スタジアムの数字・結果に結び付いているかが証明されてしかるべきシーズンになることでしょう。

 

そのうえで重要になるのが、割合や頻度だと個人的には思います。

実現したいサッカーは共有されていますし、今季は○○のクオリティが足りないから仕方ない、という理由で断念する必要もありません。昨季理想を諦めざるを得ない理由として挙げられてきた

・選手がJ1のクオリティに達していないから(らしい、個人的には反対ですが)

・残留が決まってないから(前半戦勝ち点を落とした理由は選手の個が足りないかららしい)

・目が揃うのに時間がかかるから(目が揃うより早く選手が入れ替わってしまうため)

 

これらから漸く解放され、思うが儘実現したいサッカーへ向かう環境が揃ったといえます。これで要素が揃っていなかったらあと何をすればよいのでしょうか。まだ選手の質が足りませんかね。それとも時間が足りませんかね。あるいはフロントでしょうか。指導者でしょうか。芝の質でしょうか。全部でしょうか。強欲ですね。

まぁ開幕時点での完成は難しいでしょうが、今季中に何らかの進化(深化)がみられないというのはちょっと考えたくない話です。頼れるbrazilian stormが全員長期離脱を強いられてしまうという地獄みたいな展開があれば話は別ですが、今年のように「今季の目標は残留に据えて、理想は来季に見極めざるを得ない」という先送りはもはやあり得ないでしょう。同時に、夏にお金で解決するのも芸がないと言えます。

 

これまでチームを見てきて、魅力的な時間を生み出せること、魅力的な時間は素晴らしいこと、選手個々の頑張りは十分すぎることは幾度にわたって知りました。

その一方で、34節順風満帆に行くことはあり得ません。必ずどこかでうまくいかない時期はありますが、その解決は今まで夏に新戦力が加わることでしか解決できませんでした。つまり、昨季の事例で言えば、

「磐田戦のハーモニーがかみ合った時間は至高」

「鹿島戦の逆転する雰囲気は最高だった」

「湘南戦の大団円は二度と味わえない」

 

パーツごとで見ればかけがえのない珠玉の瞬間はあれども、それはシーズン全体、90分の試合を34回繰り返した中の何分間なのでしょうか。1分でも最高の時間があれば、すべての敗北は露に消えるというサポーターの鑑のような仙人もいらっしゃるでしょうが、全体で見ればかみ合わない不協和音を聞かされ、応援している選手たちが奔走させられ、疲弊し、苦しむさまを見るしかない苦痛な時間のほうがはっきり言って私的には多かったです。そこの価値観の差からサポーター同士の軋轢もあったそうですね。

自チームの選手たちが必死に守備に奔走させられるのが愛おしいとおっしゃるサディスティックサポーターも中にはいらっしゃいましたが、これも少数派でしょうね。

選手・指導者・スタッフ・サポーター・そのほか関わる全ての方々の笑顔や喜びが、シーズンを通してどの程度見られたかということを大切にしたいですね。正直、個人的には苦しみや重圧から解放されほっとした時の涙や悔し涙は二度と見たくありません。せいぜい酒の肴の物語にはなりますが、そんなものにすがらなくとも応援するクラブにはそれ以上の勝ち・価値を生み出せるピースは揃っています。

 

クラブも将来的なACL優勝とビッグクラブ化を掲げている以上、うまくいかない時間と向き合うことは今季の至上命題でしょう。いかにピッチ上で自分たちの思惑に合致した時間を増やし、不都合な展開を少なくし、それを結果に結び付けるかが問われるシーズンになると思います。ピッチ外ではJリーグ屈指で取り組めている観点だと思うのですが、ピッチ内だと途端に偶然と個の煌めきに依拠しているんですよね…。なぜなのでしょうか。

そして、育成という観点も見逃せません。端的に言えば、所属する若手がどこまで市場価値を上げるか、他クラブさんからいかに移籍金を積んででも欲しがられる選手になるかということです。そのうえで、名古屋を選び残ってくれること・さらに成長し選手として所属カテゴリーを上げ旅立っていくことをどれだけ起こせるでしょうか。

間違っても、名古屋で市場価値を下げてしまい、できることを減らしてしまうガラパゴス選手にはなってほしくありません。そして、そんな状況を肯定して応援したくもありません。

 

話が長くなりましたが、要するにピッチ上で進む方向の妥当性が証明された瞬間が見たいということです。それも、全クラブに与えられた平等な3,060分のうち、1分でも多く輝いた時間を見たいのです。自分たちに酔いしれた傲慢な時間や一人一人がひたすら頑張り、気づくほど損をして傷ついていく無惨な時間ではなく、チームとして一貫した方向に進み、多様な方が多様な形でクラブを応援し、ともに進化していく環の中に歴史の証人としていたいのです。

 

全てのクラブが岐路に立たされています。例えば鹿島さんは「鹿島らしさ」をどう定義するかで運命は変わりますし、湘南さんも偉大なる曺監督といかにしていずれ決別し、スタイルを確立するかという問題があります。そのほかのクラブさんにしても、ここ数年どう舵を切るかで今までの勢力図がひっくり返るかもしれない動乱期に、それぞれ試行錯誤して生き残りを図っています。

 

時間は平等です。今年の夏ごろに、「時間がかかるから仕方がない」という話はゆめゆめ聞くことがないよう祈ります。そして、三度多くの優秀な選手がやってきて、すぐにスタメンになることがないよう祈ります。外からいらっしゃった選手がすぐに活躍できるということは、チーム内での成長が外と比較して遅いことと同義ですからね。さすがに3年連続で無邪気に喜べるものではないと思います。

 

 

 

 

正直なところ、今シーズンも苦戦する気がします。魂サッカー路線の数チームなど、明らかに質で押しつぶせるチームには甘美な時間も得られるでしょうが、質で上回れない相手や、ロジカルな枠が整備された相手には無惨な時間と無策な時間を浪費することになるでしょう。今年も降格がちらつくシーズンになると思います。降格して瓦解するか、残留して継続するかという絶望の2択を突きつけられる最悪の展開を繰り返してもおかしくないと思います。

 

願わくば、こんな予想を大きく裏切る飛躍の一年になってほしいですね。