炭火生存日記

しぶとく生きるためのブログ

相関関係と因果関係(名古屋グランパス編①)

はじめに、「二つの事柄に一見関係があるように見える状態」のことを相関関係と呼びます。次に、「二つの事柄に関連があり、一方が原因・もう一方が結果として明らかである状態」のことを因果関係と呼びます。

本文は、相関関係と因果関係を混同してはならないという前提の下で、以下進行します。

〇因果関係があるときは、相関関係もある

✖相関関係があるときは、因果関係もある

✖相関関係があれば、原因と結果は明確である

 

一言で言えば、「相関関係があることはある現象に対する明確な証明にはならない」という認識で問題ございません。

 

例えば、わかりやすい事例としては、健康診断と健康の相関関係が挙げられます。

「健康診断を受けた人は、受けなかった人よりも血圧が正常値に近かった(健康だった)」という現象が起こったとします。実際、「血圧が正常値に近かった」という結果のところは、健康といえそうな良い兆候であれば脂肪の少なさだろうが悪玉コレステロールの多寡だろうが肺活量だろうが何でもよいのですが、今回は血圧とします。

これをもって、「じゃあ健康診断を受ければ健康になるんだ!」という結論を出す方はあまりいらっしゃらないと思います。この場合ですと、「健康診断を受けるような人はもともと健康に対する関心が高く、日ごろから健康に配慮した生活をしている可能性が高い」という要因が背後に隠れております。つまり、

 

✖健康診断を受ける(原因)→健康(結果) ではなく、

〇健康(原因)→健康診断を受ける(結果) というのが因果関係として妥当といえます。

 

これを相関関係だけで見てしまうと、健康診断を受ければ健康になる!という誤った結論ならびに判断に繋がってしまう危険性があります(※1)

 

※1: 

「相関関係」と「因果関係」の違いを理解すれば根拠のない通説にだまされなくなる! | 「原因と結果」の経済学 | ダイヤモンド・オンライン     より引用

 

 

さて、前置きが長くなりましたが、名古屋の話に戻りましょう。

 

現在、観客増員数・満員のスタジアム実現に明確に因果関係があると素人レベルで断言できるのは、せいぜいユニフォームの無料配布くらいでしょうね。

ユニフォームを無料配布したゲームはいずれも満員御礼を達成しております。

何故達成できたかを考える時、ユニフォームがもらえるなら行こうかな、と観戦する方が考えて決断したというのも理屈として私自身は腑に落ちます。つまり、「無料でユニフォームを配布したから」という原因(理由)があって、「観客が満員になった」という結果が起こったと推察できます。無料であることそのものが多くの方の決断を左右するというのも研究結果で実証がなされております(※2)

 

※2  D.アリエリー著『予想通りに不合理』より 1円の安価なチョコと15円の高級チョコのどちらかを被験者に選択させた結果、ほとんどの被験者は当初高級チョコを選択したが、双方を1円引きして安価なチョコを無料にすると選好基準が逆転し、多くの被験者が安価なチョコを選択した。 元実験はドルだが本文は円記述。

 

それ以外は、交絡要因が多すぎて断言できません。いずれも、「影響がないと断じるのは難しい」程度のものが、複雑に絡み合った結果今現在が生じているとするのがせいぜい限界でしょう。素人では分析の手法・データベース・手に入る数字・入念な分析が可能な時間の何もかもが足りません。少し例を挙げるだけでも、ある一個人が試合を観戦するかどうかは、

 

試合前

・営業や広報によるスポンサー向けの宣伝

・ポスター広告や選手パネルによる地域への周知・イメージアップ

トークショーなどのイベント開催

・所属選手のネームバリュー

・対戦相手のネームバリュー(所属選手含む)

・チケットの安さ

・ユニフォームなどの配布物・記念品の有無

・監督の実力

・サッカーそのものの人気向上

・友人からのお誘い

 

当日

・天候

・試合そのものの魅力・試合結果

・運営スタッフの魅力・困りごとが発生した際の対応の丁寧さ・迅速さ

スタジアムグルメなど、試合以外の魅力

・トイレ事情や混雑度・wifiの整備など、観戦するうえでの快適さ

・当日席が近かった人の観戦スタイル

 

そのほか記載しきれない諸々があり、とてもとても断言などできません。

 

「晴れた日に公式の手引きを参考に初めて見に行った。公式の紹介はわかりやすかったが、スタジアムグルメは予想より混んでいて結構待ってしまった。ただ、待っただけあっておいしく、いい気分でスタジアムに入った。どこも同じように見えて席がわからないためスタッフさんに聞いたら、すごく丁寧に教えてもらえた。チームは結構強いらしく期待していた。聞いていた通りに点がたくさん入る試合でなんとなく面白かったが、近くにヤジの酷い人が居たため、最後はあまりすっきりしない気分だった」

というモデルケースの方がいらっしゃったとして、この人が次に観戦する要因って何になるでしょうか?わかりませんよね。

 

せいぜい素人が手に入るデータで明確に因果関係を主張できるのはユニフォームの無料配布レベルと断じたのはこのためです。そのほか風間体制になり、瑞穂運動場東駅の選手パネルや様々なスタジアムでのイベント・グルメ・割引策・スポンサーの皆様へのチケット送付などなど、営業や広報の皆様の数えきれないほどの努力と実行力には本当に頭が下がる思いですが、実際どれがどの程度効果があり、来場者について

・0回を1回にした

・1回を2回にした

・1回の試合でのクラブに入る金額を大きくした

・1回の試合での満足度を向上させた

 

実際どれなのかは商業分析のプロの方が相応の時間を割いても判別が難しいです。そんな判別の難しいものを数字として出すからこそまたプロフェッショナルであるのですが。

 

したがって、風間体制になり観客増員できているのは確かですが、その原因は営業や広報の尽力にある、くらいしか言えません。風間氏が全権監督とやらで積極的にイベントを企画なさっていたり、サプライズでトークショーにご参加なさっていたり、徳島のロドリゲス監督の阿波踊りへの参加などと同じく、地域のイベントへ参加なさる姿がSNSで幾度となく発信されていたら、「こうした地域への宣伝をこんなにやってくれる監督は風間さんしかいない!」「風間さんが居なければ観客は増えなかった!」となるのは確かに腑に落ちる話です。

もし本当にこうした事実があるのなら、今の情報発信に敏感な公式がこうしたオイシイニュースを発信せず、ファミリーも「風間さんいた!!」と一切SNSで発信しないのはおかしな話ですがね。

とはいえ、風間氏のトップチームの監督という業務の範疇を考慮すれば、ここまでしないのが普通であり、妥当だと思います。それは氏の仕事ではありませんからね。

よって、氏の就任と観客増加に相関はありますが、因果関係はないとするのが妥当な結論だと思います。その裏に、「営業・広報活動の大幅な強化と担当者の尽力」というより強い要因が隠れているためです。さすがに影響がまったくもってゼロと断じるのは不可能ですが、氏なしではあり得なかったと断言するのは傲慢もいいとこですね。

 

ユースについても以前記しましたが同様です。ユースの監督は古賀監督であり、トップチームと練習することはさすがにゼロではありませんが、密接に連携を取るのみならず、氏が古賀監督以上にユースの選手を知り、良い影響を与えているというのは様々な方に失礼な話になると思います。観客動員よりは氏の影響は大きそうですが、ユースの若武者の躍動と古賀監督の手腕が大前提にあって、副次的に風間氏も貢献しているかな?くらいの認識が妥当ではないでしょうか?こちらも、相関関係はありますが因果関係はないというやつですね。ユースの監督の手腕と、ユースの試合成績に因果関係がないと論じるほうが無謀ではないでしょうか。万が一億が一ここからユースの結果が不振になってしまったとして、そこでトップチームの監督である風間氏が批判されるとしたら、個人的には意味が分かりません。まぁその時は順当に古賀監督が批判されそうですが。

同様に、トップチームの監督の手腕と、トップチームの成績には何らかの因果関係はあると考えてよさそうです。選手だけ揃っていれば何とかなるというのは、今季のJ1をきちんと追っていれば幻想であることはわかりますからね。

 

実際私自身は、風間氏がGMや全権監督で、トップチームの監督のみならず、選手補強・営業・ユース・地域貢献などあらゆるクラブに関わる事象に決定権があろうとなかろうとたいして問題はございません。

あるとすれば、トップチームの監督に色々させすぎているせいで、肝心のピッチの上でのスタイル構築が疎かになっていませんか?という疑念が生じるだけです。もしかしたら氏の強みはむしろ観客動員などの企画にあるのかもしれず、監督などさせている場合ではない、と主張するだけです。お互い不幸になるだけでしょう?というのが論点になるわけです。

ないとすれば、トップチームの監督として、投資の割にミッションが果たせていませんがどういうことですか?という疑念が生じるだけです。スタイルの確立とは言いますが、マリノスさんとの試合単体・ここ数年のシーズンを通した勝ち負けの傾向・ピッチ上で継続的に発生している事象を鑑みると、本当に現在の名古屋のプロジェクトに合致する手腕を有した監督でしょうか?と主張するだけです。プロジェクトの進捗として妥当なの?というのが論点になるわけです。

多分風間氏の業務はトップチームの監督のみだと思われるので、私は現状後者の立場をとっていますがね。とはいえ、今お別れをしても何も総括ができないので、今シーズンは何があってもやり抜いていただきたい所存です。

 

スタイルの確立なんかしてどうするの?短期的な勝利こそすべてだ!とは言いませんよ。勝ちに繋がる確固たる名古屋のスタイルが本当に確立されるのならそれほど素晴らしいことはありません。何より、自分で読み返して反論がすぐできるような穴だらけでろくに賛同されそうもない主張をわざわざネットの海に出す意味がありません。

 

ただ、本気の勝負であるピッチ上で実際に披露されないまま、ある日いきなり素晴らしいスタイルが天から舞い降りて全選手に授けられるなんてことはあり得ないわけです。あり得ませんがもし舞い降りても、そんなものは継続性皆無ですね。

因果関係として、

①勝っている→スタイルが確立される

②スタイルが確立される→勝つようになる

このどちらのパターンもあり得るとは思いますが、今名古屋が目指しているのは②だと思います。勿論、①も有効な手法ですがいったん②を前提に本論は進めさせていただきます。

 

"ボールを保持して、自らアクションを起こし、チャンスを多く創りだし、ゴールを奪う" 

 

ちょうど名古屋が目標としているものをわかりやすく表現してくださっている方がいらっしゃったので誠に勝手ながら引用させていただきますが、この4点のフェーズを(順に)継続して満たしながら、名古屋のスタイルとして定着させ、常勝軍団となるというのが今の名古屋が目指しているアプローチと考えてよさそうです。

よって、トップチームの監督である風間氏に対する評価は、

 

① ボールを(主体的に)保持しているか?

② 自らアクションを起こしているか?(相手を受動的に、後追いにさせているか)

③ チャンスを多く創りだしているか?

④ ゴールを奪えているか?

(⑤ ①~④をシーズン中継続してある程度実現できるか?)

 

この5点がいかにピッチ上に現れているかを見るのが、氏を評価するうえでフェアといえるのではないでしょうか。また、継続による効果がポジティブな進化としていずれも数値に現れやすいのも明快な指標としてよい点です。「育成」とかだと個人によって著しく解釈が異なる可能性がありますからね。

例えば、相手のほうが走行距離は多いが、相手のボール保持率は低くてシュートは枠内に数本しかとんでいないという試合であれば、たとえ最後事故のような失点で敗北したとしても「相手を能動的に動かして、うまく走らせた試合だな」と評することができそうです。すべて数字通りにいくわけではないので一概には言えませんが、イメージを持つには十分だと思います。

 

 

実際に、これらがどの程度実現できているのかは、話が長くなるのでまた別の機会に綴るとします。

 

 

 

勿論ほかの切り取り方もあり得ますが、あまりに交絡要因が多い話になると氏の純粋なトップチームにおける功績がわかりづらくなってしまいます。ただ、氏の功績については、今シーズンが終わったらもっと詳しい方がロジカルかつ明快に総括してくださることでしょうし、私よりもっと感情を揺さぶる耽美的な文章を綴れる方々が沢山いらっしゃいますからね。期待して待つのが得策です。

 

 

 

 

 

 

 

 

ユースとの関連について記した記事↓

 

karyokuhusoku.hatenablog.com