理想を追うか、結果を追うか、それとも楽しさを追うか
シーズンも半分が過ぎ、湘南さんとの試合が今年もやってきました。
ここ数年間、毎年名古屋の現実を照らしてくださる素敵なクラブさんです。
名古屋はここ一週間で、神戸さんに選手の質とコンセプトの差で敗れ、鹿屋体育大学さんの練度の高いサッカーに完敗するなど順風満帆とは言い難い状況でした。一方の湘南さんもリーグ戦5連敗に天皇杯での敗退が加わり、傍目からでは順調と呼ぶのは少々難しい状況です。お互いに結果が何より欲しい試合でした。
その結果、こうなりました。
3年前は勝てば残留できる場面で、完膚なきまでに敗れました。
2年前はシャビエル選手を故障で失いつつも、撃ち合って価値を証明しました。
1年前は審判とジョー選手と川崎さんに助けられながら、紙一重で生き残りました。
今年は攻めて攻めてやりたいことができているように見せかけて、結局勝つために必要なことは何一つできていませんでした。そして、要所は締められ順当に敗れました。
内容はどうあれ、このような結果になったことは事実です。丸山選手の怪我が不運であろうと、点になりそうなチャンスが何度あろうと、オフサイドでゴールネットを美しく揺らそうと、得点はゼロです。負けです。負けた時は価値を証明できない因縁の相手に0-2でホームで、特別理不尽な判定もなく敗北したのです。
とはいえ、もはや今シーズン中に風間氏に別れを告げることは、個人的にはあり得なくなりました。
今解任をしてしまうと、後任は未定です。
結果良い監督に巡り合い好転すれば何の問題もありませんが、もしうまくいかなければ、「あのまま風間氏を続けていれば良かった…」という一生解決しないifが発生してしまいます。希望に沿った大型補強・充実した環境・フロントと一体の3年政権の集大成を見届けなければ、あるはずだったとされる未来に苛まれ続けることでしょう。ここまで投資して、やっぱりよくなさそうだから頓挫なんてのはもはやあり得ません。もう戻れません。戻れないなりに最後まで今シーズンの結果と進捗を見て、3年という現代サッカーにおいて膨大な時間と、数十億の投資を経た結果を見届ける義務があります。
もし、見届けずに撤退すれば、今後何か名古屋グランパスが暗礁に乗り上げそうになるたび「風間さんが監督の時はフロントと選手とスタッフとファミリーが一体になれていたのに…」というあるかもしれなかった未来が語られるわけです。それが本当に今の積み上げの先に存在しうるものなのか、それを確かめられるのは今このシーズンしかありません。
ここから先、名古屋に残った分岐は以下の通りになると思います。
・大型補強をこの夏行うか?
(具体的には、3人以上の即戦力級選手の獲得 and それに伴う現有選手のレンタル放出など)
まずここで、YesかNoかが分岐します。
Yesであれば、ほぼ間違いなく残留争いの目は消えます。今までの傾向と、他クラブさんの状況を鑑みれば最低でも勝ち点15は積み上げられるでしょうから、勢いが長く続けばシーズン開始時に目標としていたACL圏への到達もあり得るでしょう。一方で、5年10年続くようなスタイルの継続性はいったん脇に置き、クラブとして結果を優先したというメッセージにもなります。即戦力選手が起用されるということは、若手が実力で割り込む壁がまた厚くなるということです。
使いたいと思わせるようなプレーができる機会そのものが減衰していくわけですから、これでスタイルを根付かせることを優先したと強弁するのは厳しいでしょう。
Noであれば、ここ2年を振り返る限り目標未達は濃厚になるでしょう。さすがに降格まではいかないと思いますが、残留争いの冷汗をかかずにシーズンを終了すると信じ切るのは少々楽観が過ぎるという感覚です。最悪冷汗で済まないかもしれません。すべては関わる方々のうち、まだ余地を残した方の成長次第です。
おそらく、移籍市場を見る限りでは、この回答は"Yes"になります。
今のところ、二人の日本代表経験者がいらっしゃる可能性が高いですね。太田選手も柿谷選手も間違いなく、実力が発揮できる「自分の土俵」に乗った時の強みは日本屈指の実力者です。
結果を求めるのなら無論Yesでよいのですが、ここで問題が発生します。
いざ大型補強で勝ち続け、ACL出場圏に到達してシーズンを終了したとして、結果以外に何が得られるのでしょうか。何もなかったスタート地点で、風間氏と邂逅した意味と目的は何だったのでしょうか。
勿論、結果は至上です。ピッチで表現されることがすべてです。
しかし、結果だけを求めて当初風間氏の監督就任を喜んだ方はほぼ皆無でした。
むしろ、目先の結果だけに拘るのが嫌で、風間氏とともに行く道を選び、氏の哲学に投資したのがスタートでした。氏に正直あまり期待をしていなかった私自身をよそに、氏が来ることを歓迎し、「数年かけて風間氏と名古屋のスタイルを作るんだ!!」と息巻いていた方々のポジティブさが眩しく思い出されます。
何かを述べようにも、当時は「火中の栗を拾ってくれた」という事実があまりにも強固でした。今でも当時の監督就任に感謝はあります。
J2で苦しんだ時も、J2では反則級の戦力ながら自動昇格を決められなかった時も、J1のほぼ半分を敗北で埋め尽くした時も、いつも
「監督ガチャに未来はない!」
「目先の結果を求めた結果2016年にどうなった?」
「今諦めるのは簡単だが、そんな覚悟で名古屋のスタイルは根付かない。」
「諦める奴は本当のサポーターじゃない」
「負けた時だけ批判に出しゃばってきて厭らしい」
というありがたい言葉を胸に、補強なしでピッチ上でスタイルの表現ができない・進歩できないチームを観てきました。名古屋のために尽くしてくれた選手を競争という名目のもと、一人また一人市場価値を上げられないまま事実上放出のレンタル・完全移籍を続けてきました (ごく一部の十代の有望株は例外) 。名古屋で成長できると考え、悩みながら決断してくださった選手たちが、移籍当初輝きを放ち、やがて失い、失うとともに一部ファミリーの興味は別の選手へ移り、やがて短期間で事実上カテゴリーを下げる移籍を決断してしまうというケースが何度も起こりました。決して一人二人のプロ意識に欠けた選手だけの話ではありません。そもそもそんな選手はいらっしゃらないと思いますし。
個々がもっと規律に守られれば、やりたいことと一切矛盾しない組織の整備があれば、個々の技術をもっと細分化した詳細への拘りと挑戦があれば、もっとプレーや表情も輝きを放てるはずの選手・監督・スタッフ・サポーターの方々を見続けてきました。
良いところなく負けるたび、関わる全ての方々の頑張りや熱意が虚空に溶けるのを見て、揺るがない土台を作るという偉大な目的の前に虚しさを沈めてきました。
確かに、コンセプトなき安易なガチャは全く持って無意味です。
目先の結果を求めて目に見える部分だけを替えても、作ろうとしたコンセプトが台無しになるだけです。
では、そんな崇高な目的を胸に過ごした今の実態はどうでしょうか。
きわめて屈辱的な現状ですが、ぐうの音も出ないくらい見事に選手ガチャをしていると思います。
実態は今まさに選手ガチャ3年連続でしてますよね。監督ガチャ・フロントガチャはしていませんが、ガチャをしていないかと問われれば明確に回答は"No"でしょう。これで本当に揺るがない土台はできているのですか?
中盤の心臓部に将来を担う司令塔は君臨しましたか?
今のスタイルに不可欠な単独で相手を止められて足元にも長けたCBは育ちましたか?(そもそも希少すぎて市場に流れないので、指導・育成に定評があるのなら育てたほうが楽なはず。一人育てば実績やノウハウも蓄積するうえ、突発的な海外移籍にも将来的に対応できるので、継続性あるスタイルを実現するなら最優先するべき事項の一つ)
言いたくないですし、認めたくもないですが、選手を入れ替え、来てくださる能力の高い選手に各ポジションをアップグレードしているのは事実です。補強自体は悪でも何でもないですが、困ったときの解決手段が補強しかないのは健全には程遠いでしょう。
新加入選手が名古屋を選んで来てくださること自体は嬉しいですが、それ以上に
「練習で身につく技術<移籍してきた選手の技術」
という現実がコンセプト確立の妥当性を疑わしくさせます。他クラブさんの数倍時間がかかるわりにリターンの低い結果しか導かないコンセプトなんて無意味ですからね。
コンセプトはあるでしょうが、それは理想に即しており、現実的なピッチで表現しうる手段として妥当なものでしょうか。コンセプトは、あれば崇高で素晴らしいというものでもないでしょう。
野球で「俺の言うとおりにすれば必ず勝てる!! 全部相手に打たれないストライクを投げろ!!」と言っても仕方がないでしょう。それができたら苦労しないですし、それができないからこそ様々な形で勝利に近づくのが面白いわけです。
少々話がそれましたが、上位互換にどんどんスタメンが入れ替わるというのは、なんとなくピッチの上以外でも思い当たるものはあるのではないでしょうか?
これは既視感のあるシステムです。ソーシャルゲームを思い起こします。
往々にして、愛着を持って育て続けてきた「好きなキャラ」より、課金ガチャで当たる「強いキャラ」のほうが使い勝手がよく、無慈悲なほど強いです。そして好きなキャラはいずれ倉庫番となるか、限られた起用しかしなくなります。(そもそも見る機会も減ってだんだん好きでもなくなる)
そして、(見た)目が揃うと言わんばかりに星が揃っていきます。最高レア度のキャラを並べるがごとく、課金ガチャでチームに入った即戦力を並べ、難しいクエストの攻略に今日も向かいます。愛着を持ったキャラはほとんど倉庫に去り、上位互換が今まで出てこなかったキャラだけがチームに残り続けています。
当然、星が増えて能力が上がる課金アイテムはこの世にありません。現実は非常です。
現に誰も、怪我した青木選手の話をしなくなってしまいました。名古屋の至宝も、日本の中盤を背負うのが義務とまで評された超逸材も、不慣れなポジションに押し込められ、愛の無知を受けながら殻を破れずにいます。
それでも、ここまで投資をしてしまった以上、損切りして撤退する局面ももう過ぎてしまいました。撤退すれば、あるかもしれなかった美しい将来を10年は語れますからね。そんな美しかった過去にして語るために今があるわけがありません。
あるかもしれなかった過去を語る将来よりは、目に見えて選手が、監督が、スタッフが、様々な熱さで関わるファンが、目を輝かせて明るい表情で意気揚々といられる将来のほうが良いですね。
それが現状を続けた先に実現しそうな未来だとは、残念ながら最初から今までなお思えません。
了
しかし、2年半の時を経て、氏が来ることを歓迎していた方々は即戦力の補強を歓迎しているように見受けられる一方、氏に対して好意的な評価をしていなかった私のようなマイノリティが目先の結果を重視した補強に賛成しないようになっているとは、何とも将来はわからないものですね。
特に今日に関しては内容はよかった、やりたいことは表現できていた、で納得を得られるゲームと相手ではないですが、果たしてどのような展開になるのでしょうか。
ネット選手とシミッチ選手のファンタジーでドリームが見られてロマンあふれるファンタスティックなゲームだったから点は入らなかったけど次は勝てる、とかいうふわふわした楽しそうな感想があふれるのでしょうかね。
ただ、素人ならば別にそれでよいんですよね。やりたいことしかやらなくてもよいのが素人ですから。だからそこにお金は発生しません。やりたくなかろうが、苦しかろうが、目的のために淡々と必要なことを分析し、実行できるのがプロだと思いますし、極度の負けず嫌いというのは往々にして敗北原因と徹底的に向き合い、一つ一つ負ける原因を叩き潰していくものですから。自分を変えない人というのは往々にしてファッション負けず嫌いです。
なぜなら、
負けることの恐怖<自分が変わる恐怖(自分が変わったことで今あるものを失う恐怖・周りから何か言われる恐怖)
だからですね。
あるいは、勝てないのは選手が不甲斐ないせいだ、という帰結になるのでしょうか。 もし本当にそうなったらもう笑うしかないですね。かつて一人のサポーターとして声を涸らしたクラブはもうないのだと。
このままだと、太田選手や柿谷選手といった、日本代表経験のある実力者がいくらいらっしゃっても、 結果から逆算して不甲斐ないことにされるだけだと思いますよ?特にお二方ともチームのために堅実で愚直に汗をかける、というイメージには乏しい選手たちですから、何となく楽しくなくなった時、イメージで槍玉にあげられてもおかしくない気はします。