炭火生存日記

しぶとく生きるためのブログ

痛みを伴う革命は何年間まで?

J1も17節終わり、すべてのチームと一度ずつ戦い終わったのもつかの間、あっと言う間に後半戦に突入しています。

 

日本全体が恐ろしいくらいの暑さです。認知が鈍り、視野が狭くなる暑さです。 

 

この暑い中、現地で応援する方には本当に頭が下がります。最下位という現実の中、期待し続け、信じ続け、応援し続けられるのは本当に素晴らしいことです。

それはプレーしている選手の皆様も同様です。3分走るだけでもうだるような暑さと湿度の環境で90分プレイを続けるのは、いくらサッカーが好きでも精神的に参ってしまうものでしょう。それくらいの異様な環境です。 

 

現場がものすごく頑張っています。

 ただし進む方向が間違っていると現実の試合結果は囁きます。3節の湘南戦からリーグ戦で勝ちがないままもう8月です。漸く勝ち点3を手にしましたが、残念ながら前途はまだまだ多難です。今日ばかりは喜んでもよい気はしますがね。

 

他クラブを見渡してみても、夏の移籍市場の中で最も活発の動いたチームのうちの一つといえるのではないでしょうか。補強に使った金額を考えても、クラブが何としても降格を避けたいと考えているのは伝わります(今の本気度が小倉期にあれば残留できた気はしますが)。 順位が順位ですから、どうしても2年前の降格とだぶる部分はあります。当時と選手層は大きく異なりますから、今回降格したら指揮系統にかかわる方々の責任は相当大きいでしょう。冷静に考えて、ランゲラック選手とシャビエル選手がいて、期待通りの活躍をしていて降格するのは何かがおかしいです。

 

その一方で、この2年で加入と放出はどんどん進みました。Twitterで指摘なさっている方もいらっしゃいましたが、J2屈指と言われ名古屋に加入した多くの選手たちがJ1で通用するかもわからないまま移籍しています。その中でほぼ唯一生き残ってきた櫛引選手も金井選手の加入と同時にあっさりベンチ落ちしています。今まで練習し、監督の要求に適応してきたのは勿論全くの無駄ではないでしょうが、なんというかやるせない気分にはなりますね。非常に感情的な話ですが、何のための練習であり、適応なのかと考えさせられます。1年半かけて育った選手よりも即戦力の選手を監督が頼りにしている状態では、個人的には育成に信頼感は持てません。育てるより買ったほうが早いと監督が認めているのと同じですからね。

さらに、その「育てる」部分もかなり懐疑的です。1年半という期間があり、誰がどう育ったのでしょうか。誰がどういうことをできるようになり、どのような点で相手にとって嫌な選手になったり、味方にとって助かる選手になったでしょうか。個人で見れば代表的にはフィジカルが強くなり当たり負けることの減った秋山選手や、ボール運びが大きく上達した櫛引選手がいらっしゃいますが、止める蹴るの継続により化けた選手はまだいません。個人の頑張りと気づきにより伸びた選手はいても、チームとしてパススピードが上がったとか、バイタルエリアの攻略がスムーズになったとか、パスレンジが広がったとか、視野が広がりボールロストが減少したなどのチーム全体のポジティブな変化はありません。きわめて属人的です。育成というのはある意味では、「良い」という型や目標を決めて邁進するものでもあるので、属人性とは正反対のはずですがね…。

 

ただ、育つには時間がかかるうえ、元々がJ2クラスの選手では勝てないのも仕方ないという考え方もあります。

ここで、J2クラスという選手のレベルがあると仮定すれば、

・対応できるパターンの多さ

・あらゆる場面で保持できる選択肢の多さ

・相手に嫌なことを突きつけるスキル

・理不尽な技術

・ピッチ上で把握できる容量の大きさ

 ※一例です

 

これらの様々な要素などが練習や試合を通じて拡大して、J1クラスという上のレベルまで到達するのが成長であり、育つことだと思います。しかし中には許容量が追い付かず、成長しきれない選手も出てしまうでしょう。それがJ2クラスの選手という表現になるのでしょう。

個人的には、試合に出て通用して上記のような出来ることが増えて最終的に市場価格が上がるのが育成だと考えます。その過程では指導者がすべてではありませんが、指導者が与える影響は間違いなく大きいでしょう。

 

話が少しそれましたが、要は選手の質のせいで勝ちに結び付いていないという可能性もあり得るという考えもあります。しかし、これはそう思えません。

 

この勝ちのない4か月を思い返してみて、選手の質で何とか勝ち点をとった試合(横浜さん・広島さんとの試合) はあっても、選手の質が負けに直結した試合はなかったように思います。相手のドリブルで数人が剥がされたり、どうしようもない打点の高さからヘディングを叩き込まれたり、反則CBやGK相手になすすべがなく跳ね返されたりといった、選手の質の差としかいえない展開は半分終わってどのくらいあったのでしょうか?きわめて主観的な疑問ではありますが、正直私はゼロだったと思います。根本的な兵力の差で、相手の慢心や油断を期待するしかないような選手そのものの差を感じた試合はなかったです。勿論主観ですから、これについては人それぞれでしょう。その分準備の質の差を感じた試合はいくらでもありましたがね。また、J2では「外してくれた」シュートをJ1では「外してくれなくなった」という点は強く感じますが、ピンチそのものを作られていることに変わりないので、名古屋の選手の質の問題というよりは構造の欠陥と考えるほうが妥当でしょう。

そしてそれはいまだに修正されていません。相変わらずどこでボールを奪い、相手のどこを起点に前進し、いかに守るかは選手任せです。嵌まれば凄いですが、嵌まるかどうかは偶然です。

 

また、育成に定評があるのなら大変ではありますが、いずれ遅かれ早かれやることですし自前で育てればよいでしょう。ましてどんなタイプの選手がキーマンになりそうかは川崎さんでの経験がある風間氏を招聘した以上、見当もつきやすいはずです。熱心なサポーターの方であれば予想もつくでしょう。

足りない部分や長所となる部分をおおまかにでも育成できずに、自前で育成できるクラブになるといわれても疑問符がつきます。特に現在は、「悪いなりに理不尽な個の力で勝ち点を拾う」ための反則助っ人は何人もいる状況です。勝敗の責任を一手に引き受ける必要がなく、若手をこれ以上ないくらい起用しやすい状況だったはずです。現に開幕の先発CBは菅原選手が果たしています。

ところが、今は風間サッカーをわざわざしなくても勝てそうな選手たちを札束で集めています。それはそれでやり方の一つですから悪いことでもありませんが、それで勝てるようになっても手放しで喜べることでもないでしょう。そこに掲げたはずの継続性は皆無ですし、抜本的な改革ともいえません。回帰という表現のほうがしっくりきます。

クラブのサッカーひいては成績が属人的であることをやめるための攻撃サッカーへの着手であり、その手段として風間氏を招聘したはずです。

ところが、現実は手段と目的が逆転しています。風間氏でなければならない理由をクラブが必死に創出している状況です。属人的であることをやめたいはずなのに、どんどん個人に依存するサッカーに突き進んでいます。成長して市場価値を劇的に上げた選手もまだいません。仙台さんとの試合に勝って長いトンネルはひとまず抜けましたが、それはトンネルの終わりを意味しません。

 

この夏の移籍で、J2にいる優秀な選手は間違いなく目を付けられ、個人昇格を果たすことが決定的になりました。昨年以上に顕著で、この流れは今後も加速するでしょう。J1で居続けることは何よりも重要です。もう一度J2で基礎を作っていたら遅すぎます。

 

設計図から完成させるまでの時間は、かつてないほど監督の腕を決める要因として強く作用するようになりました。もし攻撃サッカーをクラブが進めたいのなら、現在監督をなさっている方でいえばレノファ山口さんの霜田監督・ヴァンフォーレ甲府さんの上野監督・徳島ヴォルティスさんのロドリゲス監督あたりは攻撃に重きをおいて魅力あるサッカーを展開していると思います。解任されてしまいましたが元柏さんの下平監督も設計図が明確で落とし込める方だと思います。こうした方々ですと一年どころか数か月で型はできます。

 

そんな中で5年待つのは、焦りを通り越して恐怖を覚えます。川崎さんの経験が活きて3年くらいで形になるとしても、もはや遅いと感じます。3年たてばサッカーの流行も変わりますし、チーム内のマンネリ感も何となく出てきますし、相手の対策だって蓄積します。もっと成長する他クラブさんも出てくるでしょう。

 

しかし、3年で形になるとしても、もう半分経過していますよ?あと半分で今のままのチームでどんな劇的な成長がみられるでしょうか。

 

ここで「まだ1年半」なのか「もう一年半」なのかで、大きく考え方が異なるでしょうね。

個人的には期待はしたいですが、正直なところ恐怖のほうが上回りますね。 何年間今のような入れ替わりと出費の激しい革命が続くのでしょうか。

変わろうとしてなお戻ってくるのなら、相手に攻めさせて優秀なGKと愚直なDFたちが点だけは与えずに気づいたら勝っている昔のスタイルを名古屋らしさとしてもよい気がしますが、なかなかそうもいかないのでしょう。