炭火生存日記

しぶとく生きるためのブログ

一人だけ成長していない人が名古屋グランパスにいる

J1に帰ってきた名古屋グランパスですが、現状過密日程の中無惨な状態です。

 

14試合を終えて得点はわずかに12、失点は27と降格するチームの典型のような数字を残しております。もし、現在のチームがけが人続出でスタメンを組むのも一苦労、あるいはGKに不運が重なって最後の砦を高卒新人に任せるしかないような状況であればまだ擁護もできますし、不幸を憂うことも可能でしょう。

しかし、現在チームのゴールマウスを守っているのはオーストラリア代表候補のランゲラック選手です。J1基準で考えてもトップクラスの実績を持つ選手ですし、間違いなく前評判にたがわぬプレイをほぼ毎試合見せています。ここ3試合で10点は防いでいるので、14試合で換算すればすでに30点は防いでいるでしょう。何とも笑えない話ですが、彼のおかげで27失点「で済んでいる」という状況です。彼がいても1試合2失点ペースという常人ならおかしいと気づくペースでの失点ですが、一向にチームに変化は見られません。

今まで夢にすがりたい方は「ホーシャ選手が帰ってくれば」「新井選手がいないからだ」「ジョー選手のコンディションが上がれば」「〇〇選手のシュートが入っていれば…」「若手に積極的にチャンスが与えられているから開花すれば…」と尊敬に値するレベルでポジティブな要素を見つけていらっしゃいました。本日まではわずかなポジティブ要素を砂漠で水を啜るかのごとく希望にすがっておりました。

 

しかしながら、本日ついに、昇格組として格上であるとはいえども、明らかなJ1仕様の金満補強をしたわけではなかった長崎さんを相手に、チームとしての完成度の差を完膚なきまでに見せつけられ、叩きつけられ惨敗しました。長崎さんには少し失礼な言い回しになってしまいますが、昨年度にJ2で負け越した相手ではありませんし、J1で首位を独走する強豪でもありません。良くも悪くもやるべきことをまじめに積み上げる堅実なチームです。それゆえ、圧倒的な個という理不尽に泣かされることも時にあり得ます。

J2で最後に戦った時から両チームの方針が劇的に変わったわけでも、選手が大きく入れ替わったわけでもありません。それゆえ、志向するサッカーをどの程度前進させたのかを試すうえでは絶好の機会だったといえるでしょう。同じ期間、同じ監督で同じ過密日程を過ごしてきて、ここまでの差をつけられたのです。ほぼベストメンバーが揃いながら、自慢の攻撃はいつものように発揮できないままにまたしても終わったのです。理不尽な個を攻守に持ちながらも無惨に敗北したのです。

 

ここまで14節を経て、いまだに崩しからの得点はゼロです。付け加えて言えば、「崩し切って押し込める人間があとは触るだけだった」「相手GKが理解不能なレベルで神がかりすぎていた」もほぼゼロです。逆の立場は散々ありましたが(笑) 特にマリノスサポーターの方は不平不満の一つも吐きたいところでしょう。

先ほど述べたように、今期になって急に志向するサッカーが変わったわけでもありません (e.g. 横浜Fマリノスさん) 。継続していてこのざまです。選手もようやく揃ってこの惨状です。チャンスすら作れていない状況ですから、何かしらうまくいっていないと考えるのが妥当でしょう。具体的には、

 

1. 相手との差がありすぎて、理想を実現しようがしまいが勝てない

2. 理想もアプローチも正しいが、浸透に時間がかかっており、今は途上である

3. 理想もアプローチも正しいが、日程のきつさや疲れのせいで実現できない

4. 理想は正しいが、そこに至るまでのアプローチがおかしい

5. 目指している理想がおかしい

 

このあたりの理由が個人的には考えられます。

まず、1については妥当ではないでしょう。ランゲラック選手・シャビエル選手はJ1でも反則級助っ人に近いレベルです。ジョー選手も移籍金に見合うかはともかく、攻撃が壊滅的な状況にもかかわらず3試合に1点は取っているペースです。物足りなくは感じますが外れ助っ人と決めつけるのは気の毒な状況といえるでしょう。彼らに相手の意識がどうしても集まることは想像に難くありませんし、単純な数字だけで効果を断言するのは難しいところがあります。

また、和泉選手や宮原選手・長谷川選手に小林選手といった面々が明らかにJ1レベルに劣るということはないでしょう。確かに選手層は決して厚くはありませんが、どうしようもないレベルで選手がみるみる剥がされて弄ばれるという試合はなかったように記憶しています。ルヴァンはともかく、リーグ戦でどうしようもない選手の質の差を感じたことはありませんでした。ここは個人差があるかもしれません。

 

2については、未来のことがわからない以上何とも言えません。しかしながら、浸透に時間がかかるとしても、こと現在地においては理想の実現可能性並びにアプローチの妥当性は低いとしか言えません。

なぜなら、

・試合ごとに良くなっているどころか悪くなっている

・あと一歩で決まるチャンスの創出など、理想の片鱗といえそうなものが一切見えない

・流れのチャンスに再現性がなく、選手のコンディションに大きく依存する

・川崎ですでに経験があるはずなのに、過程が短くなっていない

 

といった現象がみられるからです。

途上であるならば、毎試合右肩上がりで順風満帆とはいかなくても、

・あと一歩の惜しい場面が徐々に増える

・どうしようもない失点が減る

主体的に創れるチャンスが増加する(相手選手のファール増加・枠内シュート本数の増加など)

 

などの兆候は随所に見られるでしょう。本当にアプローチが妥当で理想の途上であるのならば、ゆっくりであっても見られるはずです。ところが、これも見られていないので懐疑的にならざるを得ません。加えて、もう一つ怪しくなる要因がまだ残っています。

「川崎さんで経験しているはずのルートで、どうして足踏みしているのか?」

という疑問です。風間氏を支持する方はたいてい根拠が川崎さんでの実績をもとにしています。つまり、実績を認めているわけです。確固たる実績を認めているわけですから、当然それはほかでも再現されるものとして考えられるべきです。加えて、一度作っているわけですから、2度目は短縮・効率化といった何らかの創意工夫は見られてしかるべきでしょう。1度目に5年かかり、2度目にも5年かかっていたら、サッカーの浸透としては遅すぎます。指導として優秀とはいいがたいでしょうし、億単位の指導者の仕事とは言えないでしょう。

「川崎さんでの実績は素晴らしいが、ほかでうまくいくかはわからない」ではただの偶然ですし、偶然であれば風間氏である必要性は皆無です。端的に言えば小倉氏でもよいわけです。ここまで名古屋専用のチューニングといえそうなものが試合を通してほとんど観測されていないことはその不信感に拍車をかけます。また、状況証拠として、練習でロンドのみを行っており、止める蹴るという技術に特化する一方、守備や失ったボールの回収、再現性のあるビルドアップや効果的なヘディングといった「観測外の技術」に未だに手を出さない点も気になる点です。

 

3についても同様です。今年のJリーグが過密日程になることはわかっていたことです。例年以上にターンオーバーや戦術の妥協が重要になる年であるというのは、素人である私でも予想の付く話です。プロの方々、サッカーでお金を稼ぐ方々がわからないはずがありません。ホーシャ選手の稼働率が現状予想よりも低いのかなとは考えられますが、新井選手が予想より早く復帰を果たしたり、菅原選手がある程度戦力として見積もれたり、櫛引選手がSBとして戦力計算できるようになったりと、マイナス要因ばかりとも言えません。どうしようもないという言葉で片づけるしかないほどの窮状ではないでしょう。

加えて、肉体同様に脳を酷使することも予想できた話です。刻一刻とピッチ上で変化する状況で、逐一最適解を考え続けることが負荷にならないはずがありません。まして回復期間も短く移動も激しいわけですから、可能な限り消耗を抑えるのが得策でしょう。

そのうえでとれる方略はいくつかありますが、戦術の単純化とチームの意思統一はわかりやすい手法のうちの一つでしょうね。逆に、準備なく無策で臨み、その場で選手にとにかく考えさせていたら間違いなくパンクするでしょう。そうした脳の縛りプレイに対する悲鳴が、緩慢なパスミスや信じられないリスク管理につながると考えます。そうした縛りプレイが選手に好影響を与えるのでしょうか?個人的にはただ自信を奪うだけだと思いますがね。

身体や頭が極限まで疲れると、どんな方でもとんでもない判断をしますよね?

 

4についてですが、個人的にはこれが一番妥当だと思います。主体的にボールを保持するサッカーを実現するには、選手にいらない負荷をかけすぎているのが現状だと思います。

きわめて個人的な考えですが、ボールを保持してゴールに迫るサッカーは、淡々と相手に2択を迫り続け、その都度逆を突く極めて自由度の低いサッカーだと思っています。自由とは正反対の規律に固められたサッカーともいえるでしょう。なぜなら、真にボールを保持することを追求するのならば、

・ボールを失ったときどこでどうやって誰が回収するか

・相手選手のうち誰を悩ませ、迷いをどう生んでそこを突くか

・創造した時間的・空間的余裕をどう活用するか

・最後にどこにパスを出し、誰が走りこむか

 

まで徹底的に決め、機械のごとく相手を押しつぶすまで繰り返す必要があるからです。徹底的に決めなければならない理由は、いちいち考えていたら90分どころか45分も持たないからです。簡単ですね。

それを実現するためには、練習でパターンを叩き込むとともに、90分間遂行し続けるためのコンディションも重要です。食事も限定され、脂肪の多い焼き肉などは論外でしょう。睡眠管理も重要になりますから、寝る時間や睡眠時の枕・スマートフォンの管理などまで手をつける必要があると個人的には思います。

ところが、コンディション面の徹底を含め、これを何一つ決めていないので、選手が無駄に疲れます。せっかく止めて蹴ったことで得た時間的・空間的な余裕も、次のパスコース探しや展開の予測で帳消しです。そもそも止めることに主眼を置きすぎて場所で先手を取れないこともあります。余裕を得て相手に迷いを生むための手段としてボールを止めるのであって、ボールを止めることが目的ではありません。スペースに走りこむことで空間を作ってもいいですし、ドリブルで作るのもよいでしょう。ターンや体の向きで作る方法もありますし、味方を利用するやり方だってあります。この辺りは選手の特性を加味してどこで優位を得るかは準備段階である程度決められるでしょう。

もちろん、すべて完璧にはいきませんし、相手のヤマが当たることもあります。準備段階の想像以上に相手が上手だったということもあるでしょう。そうすればボールは奪われます。これはゼロにはなりません。完璧はあり得ません。

そして奪われたら今度は走りながら奪い方を考えなければいけません。全力で戻りながら、ピッチ内での位置関係をその都度情報として取り入れて最善な場所を考えて動くという作業は、とてつもない負荷がかかります。素人は1分やってみるだけでも身体が鉛のように重くなるのではないでしょうか。加えて、個人が最適だと思った特攻も味方に害を与えます。余計に誰かの疲れを誘発します。事前の準備もなしで完璧にピッチ上で考えられるプレイヤーは世界を見渡しても一握りでしょう。

そんな一握りのニュータイプを目指す途中で多くの選手の才能が潰れるほうが先だと思いますね。捨てたはずの観測外の技術に苦杯をなめさせられる機会のほうが圧倒的に多いでしょう。

そもそも、観測外の技術って現在志向するサッカーとそんなに相反するものでしょうか?ボールを保持するためのリスク管理として必要なものではないのでしょうか?例えば、ヘディングを効果的にできることで相手に迷いは生まれませんか、守備から攻撃へ上手に転じられませんか?

 

そして、5については個人の好みです。個人的にはあまり好みではない理想ではありますが、正解は一つではないので何とも言えません。ただ、クラブがどんな手段を使ってでも実現したいのであれば支持はします。生半可な決意でやるのであればやめとけ、としか思いません。

 

長くなりましたが、要するに、「お粗末としか言えないミスに再現性がある」のは、根本的なコンセプトに誤りがあるか、実現のためのアプローチに誤りがあるか、選手に異常な負荷がかかりすぎてパフォーマンスが低減しているかのいずれかであるということです。ここ数試合一切予兆がないまま、突発的に起こったものであれば単なる不幸として片づけてもよいでしょう。しかしながら、繰り返し起きているにもかかわらず、一切修正がなされないのは、もはや指導に欠陥があるとしか言えません。それは監督かもしれませんし、フィジカルコーチかもしれませんし、メンタル管理かもしれません。もしかしたら全部かもしれません。

ただ、敗戦後の監督コメントを見る限り、変わろうとするクラブでたった一人だけ何一つ成長しない人間が浮かび上がります。

 

集中力の欠如。前半後半の立ち上がり、自ら相手にゴールを与えてしまった。あとは、そのあと立て直すだけの闘う気持ち。気持ちとはどういうことかと言えば前に向かう姿勢ですね、テクニックを含めもっともっと闘わなければいけなかった。

nagoya-grampus.jp

 

精神論は戦う前のあらゆる準備を包括的にすべて尽くしたうえで最後に語るものです。

野球の監督が、「必ずストライクを取れ!もし負けたら俺の指示に従わなかったお前たちのせいだ!」とほざくのと変わりません。

 

現在の名古屋グランパスは、

・ビルドアップを構築できない

・選手が選択肢を複数保持できなるような状況を作れない

・相手に迷い、焦りを与えられていない

・多すぎる情報、厳しい疲労でむしろ味方が混乱している

・能動的な崩しを構築できない

・失ったボールを効率的に回収できない

・ゾーンを整備できない

・若手に自信を与えられない

・海外で評価されるような若手を実は育成できない (ガラパゴスプレイヤー)

 

※川崎さんで風間式の指導を受けた結果、海外で評価されて移籍したプレイヤーはおらず、大島選手も強度の高い国際試合ではフィジカルが追い付いていないため90分間は活躍できていない、事実移籍していない。

 

これらを繰り返して確立できるスタイルとは何なのでしょう。そこにクラブの未来はあるのでしょうか。そこに相手はいるのでしょうか。

私に限って言えば、海外をはじめとした他のクラブから魅力的だと思われるような選手がクラブ愛を語って残ってくれたり、「名古屋で成長できた」と新天地で活躍して語ってくれるからこそ応援が喜びになるのであって、引き取り手のない我儘ガラパゴスプレイヤーに内輪で騒がれても何の思いもわいてきません。

 

今、かなり絶望的な状況ではありますが、ベンチ外の日々が続く楢崎選手からピッチで戦っているレギュラー選手、できるだけ貢献しようとしてくれる特別指定の選手など、選手は不格好なりにも適応しようとしていますし、執念も感じます。押谷選手の空回りに辟易としてしまうことも時にはありますが…。

クラブも、一度J2へ落ちたことで様々な取り組みに力を入れており、本気で変えようとしていることはわかります。自分自身もトヨスポに足を運ぶようになったり、以前より選手を身近に感じるようになりました。

 

そんな中、未だに変わろうとしない人がいることが本当に気に食わないです。

 

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