炭火生存日記

しぶとく生きるためのブログ

不必要な人にはただの燃料で、必要な人には何の参考にもならない調査

www.sankei.com

 

こんにちは。火力不足です。

 

明治安田生活福祉研究所が、25~34歳の独身男女3296人を対象にインターネットで行った調査により、独身者の過半数が結婚を意識した男女交際をしたことがないという結果が出たそうです。また、そのほか男女別の結果であったり、研究所による分析も記述されていますね。

 

しかしながら、調査としては十分なのは人数だけです。こういう意識調査で曖昧になりがちな部分の定義はありませんし、分析も残念の一言です。これを本当に結婚したい独身者が読んで参考になるかは甚だ疑問ですし、私からすればただの燃料です。調査自体がまともで記事が曲解している可能性も考えましたが、調べたところ調査自体の問題のほうが目につきましたね。

 

本日は、調査の問題点を徹底的に記述することを目的とします。

 

http://www.myilw.co.jp/research/report/pdf/myilw_report_2017_02.pdf

25~34歳の結婚についての意識と実態 -男女交際・結婚に関する意識調査より-

以降の本記事の解釈は全てこの資料のデータに基づき行うものとする。

 

目次

・主導権の矛盾

・定義が極めて微妙

・そのほか興味深い点

 

・主導権の矛盾

まず1ページ目の「主な内容」の時点で興味深いのが、アラサー世代の男性・女性と銘打ちながら、半分は女性のみの意向です。具体的には、「交際を終わらせた」「年収を希望する」など女性が明確に選択権を持っているといえる文が並んでおります。実際のところ、交際経験の割合や実感を踏まえても、交際・結婚において主導権を握っているのは女性であることに違和感を覚える人間は少ないのではないでしょうか。資料中の図表3や図表4、図表7の男女の人数差やそもそも女性のみの回答になっている点を見ても、女性が交際の存続・終焉の決定権を有していることを肯定しています。そうでなければ、間違いなく男性側の同様の指標は出るでしょうし、その数値は女性より高くあるいは厳しく出るはずです。「男性がえり好みしている」という格好の結論が出るので、使わないはずはありません。ただ、そんな結果どころか調査した記述さえないわけです。

推測にはなりますが、おそらく調査する側の男女平等意識が遅れていてそもそも男性側の質問項目を作っていないのでしょう。調査する側の意識の遅れが顕著な一文を引用します。

 

“アプローチは男性からという考え方が主流なのに消極的な男性が多くいる。その結果、結婚前提の真剣な交際までたどりつけないのではないか”

 

個人的にはあり得ませんね。自由恋愛を進め、男女平等を進めて、主導権が明確に女性側にあってなおなぜ男性側のアプローチが主流であるべきとほざいているのでしょうか。この意見は本当に卑怯です。苛烈な反論が予想されることから女性側が主導権を持ってアプローチをするように勧告できない臆病さと、自立した女性の主体性を全く期待せず待つことを女の幸福と決めつける強烈な女性差別意識と、負担を男性側に押し付けることで見せかけの解決を図る問題からの逃避を融合させた極めて卑しい発言です。時代錯誤はなはだしいですね。

決定権や主導権を持つ側は往々にして強者ですが、今回の件は「主導権を持たない弱者が消極的で行動しないのが悪い」って分析しているのと同義ですよ?研究所を名乗るなら主導権意識の乖離についてはむしろ課題として言及してほしいくらいですがね。そのうえで、なぜ男性が消極的になったかを本当に真剣に考えてほしいものです。むしろその点を説明できない調査に価値がありますか?

 

・定義が極めて微妙

まず、「結婚を意識した(させられた)交際」というのが曖昧です。20代で交際すれば意識するのでしょうか、夜の営みをすれば意識するのでしょうか、10代のうちに将来のことを漠然と考えて「この人と…」と妄想したのは意識したうちに入るのでしょうか。要は、個人によって、意識する段階もイベントも年齢も違いすぎてわかりかねます。よって、「交際があった」側について語れることは非常に限られますね。そこを把握しているのか、調査でも「交際がない側」に絞って話を進めていますね。

 

また、図表11にある「人間的魅力」は危険な語句ですね。女性のみにしか尋ねていないのでわかりかねますが、男性の中で考えても、(金遣いが荒くなくて優しいことを)人間的魅力とする男性と(顔がかわいくて身長は155~160cmで巨乳でウエストが60未満で自分だけをずっと見てくれることを)人間的魅力とする男性がいるように、(身長が180cm以上あって年に2回は海外旅行に連れて行ってくれて気分のいい時だけ愛の言葉を囁いてほしいときにお金をくれることを)人間的魅力とする女性はいるでしょう。ここも人間的魅力に内包される欲求が曖昧すぎて何とも言えません。理想を自由に回答したのか、現実的に行動できる範囲に絞ったのかもわかりませんね。

 

そして、図表12の「理想・条件を特に意識することなく結婚すると思う」にも同じことが言えます。おそらく意識としては普通でいいと考えているのかもしれませんが、普通の認識が恐ろしく乖離している可能性もあります。普通といいつつ上位1%の要求をしていたという笑えないケースもあり得ますからね。こうした一見「普通に見える意識」の中身を詳細にして、変革の進んでいない部分を明らかにするほうが少子化の改善につながると思うのですがね。

 

・そのほか興味深い点

図表2より、男性に顕著ではありますが、男女とも交際経験がない層が一定数います。その層の本意はやはり「やり方がわからない」に尽きるでしょう。やり方もわからないし、「そもそもやり方を一から習得してまで交際したい異性もいない」ということですね。恋愛を一つの娯楽ととらえる動きが男性のみならず、女性にもみられているのは興味深いです。やはりこの国に自由恋愛は合わないということなのでしょう。

その他、結婚を意識しない交際を行ったことがある層についても言及がほしかったですね。個人的には、交際という形で異性と交流してみたものの、自分に不向きであるとわかり撤退したまたはその後も別の形で続け結婚を意識した交際に至ったと踏んでいます。この分岐がどうなるか、というのも学習においては非常に重要なので明らかにしたい部分ではあります。

 

図表5は女性側が待つという旧来の男尊女卑的価値観に基づいた行動になってしまいますので、女性の意識面も改革が必要だということですね。ただ、4割近くの女性が主体的に動くというのは社会進出の成果が出始めているのかなとも思います。都合のいいところだけ男女平等なんてうまい話はありません。

 

図表8, 9について交際関係のキープで既婚者のほうが高い結果が出るのは、学習の結果でしょう。繰り返し異性との距離感などを学習した結果、そういった並行作業をしたほうが良いという結論に達したのでしょう。つまり、キープへの罪悪感を捨て、試行回数を純粋に重ねるほうが結果的には既婚者に近付く傾向にあるわけですね。加えて、当初から本命だった方と最終的に結婚した方が半数いらっしゃるわけですから、既婚者の6人に1人はキープした挙句捨てることをしたわけですね。6人に1人なら上位20%に入る人間とも考えられるので上位層は割と好きに容赦ないこともできる主導権があると考えてもよさそうです。

 

・まとめ

この調査から私が見た限りわかったことは、結婚したければとにかく交際の学習を積み、時には躊躇なくキープと破棄をするのが近道であることと、男女とも結婚を諦めた人間が4分の1以上いることと、意識調査といいつつ肝心の意識が明らかになっていないところでしょうか。簡略化された記事だけ読んでしまうと、「5人に2人は理想や条件を意識しないなら私だって…」という勘違いのもとになってしまうので、何の参考にもならないでしょう。

確かに、調査として言語化するのは難しいところもあるのは事実ですが、曖昧な部分の言語化・細分化なくして真の課題は見えないと思います。あと草食男子のせいにするのもそろそろやめたほうが良いと思います。5年前から何も進歩してませんね。

 

 

参考記事 

karyokuhusoku.hatenablog.com

 

karyokuhusoku.hatenablog.com