引きこもり自体が見えづらいだけに過ぎない
こんにちは。引きこもり経験者の火力不足です。
女性の引きこもりが見えづらい存在であるという記事がありました。国や自治体の統計上では、家事手伝いや主婦(主夫)が引きこもりの対象とされていないことから、国に見過ごされている引きこもりが存在するという指摘があり、示唆に富んでおります。
このような、国や自治体の統計から見落とされていることを主張し、問題を共有することは非常に重要な行動だと思います。しかしながら、腑に落ちない点もいくつかありましたので掘り下げようと思います。
本日は、この記事の矛盾点を、引用しつつ指摘することを目的とします。
目次
・引きこもりとは?
・そもそも引きこもり自体見えづらい
・記事のとんでもない矛盾
・引きこもりとは?
記事中にもあるように、定義が大きく分かれますが、平たく言えば外に出られない人間だと言って差し支えないと思います。ただ、そうした引きこもりが生じる原因については上記の記事にもあるように、精神疾患に代表されるものから多岐にわたるので断定は難しいですね。
ただ、経験した身からすると、外界の環境に対して何らかの影響により[1]恐怖を感じ、外界に出るためのエネルギーを蓄積している回復状態というのがしっくりきます。行動するための精神力が枯渇してしまっており、自動車でいえばガス欠を起こしている状態ですかね。
そして、家事手伝いや主婦(主夫)が定義上引きこもりに含まれていないのは、外界でストレス要因と触れることがあまり想定されていないことが原因といえそうです。極端に言ってしまえば、「別にいじめ・劣悪な労働環境とかに接する要素がないならまず引きこもりにならないだろうし、もし家庭が原因なら自分たちで何とかできるよね?もし無理そうなら(DV)訴えてもいいし、離婚もできるよ?」というのが国や自治体のスタンスではないでしょうか。
個人的には公的な機関が過干渉でも時間や税金の浪費につながるので、現在くらいの立ち位置がまぁ妥協点かなとは感じております。
・そもそも引きこもり自体見えづらい
ということで、国や自治体が積極的に引きこもりを探して、支援するということは考えにくいですし、支援といっても本人の回復中にできることは限られています。それこそ事後で保険が下りるようにして、しばらく休養しても社会復帰が可能な構造を作り、そのシステムを周知させるのが最善になりそうなくらいでしょう。
実際、引きこもり中に「引きこもり調査してます」なんて言われてホイホイ返事できるなら引きこもりとしてはかなり回復しているといえるでしょう。私的な空間に身を置いて羽を休めるのが引きこもりである以上、見えづらいのが本質です。別にそこに性別とかからまないと思うのですがどうなんでしょう。
・記事のとんでもない矛盾
かなり長くなりますが、突っ込みどころが多すぎるのでほぼ全文引用したのちいくつか指摘します。原文における誤植はそのまま引用し、「原文ママ」と記述します。
2016年9月、内閣府が「若者の生活に関する調査報告書」のなかで「ひきこもりの若者はおよそ54万人いる」 との調査結果を発表した。
この調査のひきこもりの定義(調査対象者)に以下の文言がある。
「主婦・主夫、家事手伝いの者と統合失調症または身体的な病気がひきこもりのきっかけになった者を除く」
この定義について、複数のひきこもり支援団体から、多くのひきこもり女性は「家事手伝い」に含まれるため「事実上の調査対象外になることを意味する」と指摘されてきた(※)。
※内閣府の調査については、40代以上のひきこもりも調査対象外となるため、当事者らが問題を指摘してきた。しかし、東京都町田市や秋田県藤里町など自治体レベルでの調査では40代以上も調査されており、女性に特化した調査だけがないのが現状である。(1)
「働いていない」ことは当事者にとっても引け目を感じやすい。ひきこもりとしての苦しさを抱えながらも「家事手伝い」という言わば隠れ蓑で自分を隠したい女性が多いからだ。 (2)
さらに主婦でも (3) 「人と関わるのが苦しい」「働かなければいけないのに働けない」と、ひきこもりの苦しさを抱えている人がいる。
こうした点が調査でひきこもり女性が見えづらい背景として指摘されてきた。
ひきこもりUX女子会のようす
昨年6月、ひきこもり女性だけで構成される自助グループ「ひきこもりUX女子会」がスタートした。過去20回の開催で累計650名が参加したが、参加者の大半は国の調査では対象外だった可能性がある。
一方、国も見えづらい「ひきこもり」の存在は認識している。厚生労働省は「調査結果はすべてのひきこもりの実態を網羅したとは思っていない」との見解を示しているからだ。ただし「意図的に女性を排除した調査ではない」と調査を改める可能性は否定している。
日本初のひきこもり女性実態調査へ
ひきこもり女性は周囲から「働かなくても結婚すればいい」と思われるなど、その苦しさが伝わらずに孤立しやすい。(4)
女子会に参加した30代の主婦は「自分の苦しさが夫を含め誰にも理解されず(5)、どこにも居場所がなかった」と語っている。
ひきこもりUX女子会で使われたホワイトボード
現実には苦しんでいるひきこもり女性がいるなかでその実態を積極的に捉えようとする行政の動きがみられない。(6)
こうした問題を踏まえて、女子会は日本初の「ひきこもり女性実態調査」に乗り出している(結果の発表は来年2月下旬予定)。
本調査では女子会参加者を中心に年齢制限を求めずに実施する。
調査の狙いは、国の調査から見えづらい「家事手伝い」や「主婦」であり、「ひきこもり状態」の人の実態を示すこと。そして、ひきこもり女性は何に苦しんでいるのかという「ひきこもりの苦しさの中身」を明らかにすることである。
同時に各地で女子会を開いてもらおうと、今年9月22日~12月24日にかけて全国10都市で12回の全国キャラバンを展開、ブックレットも刊行する(※詳細は「ひきこもりUX会議ブログ」に順次掲載)。
問題の本質に迫る実態調査を
ひきこもり女性が見すごされてきた理由は、国の調査が若者支援などを理由に表面上の枠組みに則って進められたものだから(7)だろう。
そもそもひきこもりが社会問題化した90年代後半から国は「ひきこもりの定義」に揺れていた。上限年齢や疾病の有無など、その定義は現在に至るまで細かく変更され続けたが、そのたびに「対象からこぼれ落ちる存在がいる」とひきこもり当事者らは指摘してきた。
なぜこんな問題が起き続けたのかと言えば、ひきこもりは単なる年齢や属性(原文ママ)捉えらえる(原文ママ)ものではなく「苦しみの総称」だからだと私は考える。(8)
ひきこもりは「怠けているだけだ」と周囲から蔑視される。ひきこもった背景のいじめ、就活失敗、DV、虐待など「ひきこもらざるを得ないほどの傷」には目も向けられない。さらにセーフティネットの薄さや女性への偏見(9)など、さまざまな社会的な障壁が重層的に絡み合うことで、当事者は「生きていていいと思えない」(20代女性)と語るまで追い詰められてしまう。
こうした苦しさの中身を当事者から拾いだし、そこから見えるひきこもりの実態を捉えていかなければ、いつまでも問題の本質には迫れないだろう。
新たに実施される女子会の調査は苦しさの中身にも踏み込むという。国はこうした調査結果を踏まえ、現在の実態調査のあり方を検討すべきである。
(1)女性に特化した調査だけがないのが現状である。
女性だけに特化する理由がありません。まるで男性に特化した調査があるかのような書き方ですが別にそんなことはありません。また、男性のみに特化する理由もありません。社会構造上、外界と接する機会の多かった男性寄りのシステムに結果的になっているだけであって、複雑な要因で心を休め引きこもっている人に属性は関係ないでしょう。実際この定義なら社会進出の結果引きこもりになった女性は含まれます。要は、定義上家で引きこもりになるような要因が発生することが想定されていないだけです。実際家で発生しうる事案の救済は離婚とかDVの方向で補完しているでしょう。
(2)「働いていない」ことは当事者にとっても引け目を感じやすい。ひきこもりとしての苦しさを抱えながらも「家事手伝い」という言わば隠れ蓑で自分を隠したい女性が多いからだ。
家事手伝いとして隠せるのだからよいじゃないですか。後ろ指刺されながら「あいつはひきこもりだ」なんて言われずに済むんですよ?しかも隠したいということは当然ではありますが、隠せるなら隠したい女性が多いわけです。そんなもん誰だってそうです。別に女性に限った話ではありません。私は引きこもりですと宣言できるのは精神力を回復して開き直れた人間だけです。
隠すことで引きこもりとは言われたくないが、実質引きこもりなので支援を受けたいということでしょうか?あまりこういう表現はしたくありませんが、都合よく甘い汁だけ吸いたいという風に見えてしまいます。
(3)主婦でも
主婦に限った話ではありません。同じ問題に直面する人間で考えればよい話です。主婦特有の悩みなら発言小町など賛同者が多そうな媒体での相談や趣味でのガス抜き、夫に偏った依存をせず、嫌なことをきちんと口で伝えるなどをすれば大抵解決すると思いますがね。ただその嫌なことの解決が夫一人で難しいようなら自分が手伝うことも必要でしょうね。
もしそういった気力がない状態ならこれも素直に伝えて休めばよいでしょう。
(4)ひきこもり女性は周囲から「働かなくても結婚すればいい」と思われるなど、その苦しさが伝わらずに孤立しやすい。
そもそも引きこもることが社会的に許されない人間はどうなのでしょう。もっと言えば、家事手伝いの立場を隠れ蓑として利用してますよね?家事手伝いという立場を隠れ蓑としておきながら、隠れ蓑があると考えられることはプレッシャーになり、孤立に繋がるのですか。都合のいい時だけ使える隠れ蓑が欲しいのでしょうか?もっと言えば、苦しさは伝わるものではなく伝えるものです。察してわかってだけでうまくいくはずないですし、察してだけでは孤立するでしょう。気を利かせて察したところでもっと察することを求められ、察する方が摩耗していきますからね。ちゃんとした方に苦しさを適切に吐露すれば、必ず何らかの形で援助が得られるはずですがねぇ。
また、「働く」と「家庭に入る」の複数選択肢を持てる時点で、自由度は男性より高いです。少なくともごく潰し扱いはされません。しかし、自由な分様々な価値観の方から色々戯言は言われます。
参考記事
(5)自分の苦しさが夫を含め誰にも理解されず
話し合っていないに尽きる話。こういう妻に限って夫の苦しさもどうせ理解していません。理解するつもりがあるかどうかも怪しいです。自分がわかろうとしない限り相手もわかろうとはしてくれないでしょう。わかろうとした結果自分がカモにされそうなら逃げるべきですがね。また、苦しさを話せるような親しい友人がいることの重要性を再認識させられますね。
(6)積極的に捉えようとする行政の動きがみられない。
構造上引きこもりは積極的にとらえられません。合格発表の日に運悪く落ちてしまった学生の動きを積極的にとらえるようなものです。そもそも当の本人が申告したがりません。積極的にとらえるものでもないでしょう。行政に期待しすぎです。もっと言えば、苦しいのはわかりますが他者に救済を期待しすぎです。
(7)国の調査が若者支援などを理由に表面上の枠組みに則って進められたものだから
(6)に同じ。行政ができることには限界がありますし、過干渉は引きこもりには逆効果になるので絶対いけません。
(8)ひきこもりは単なる年齢や属性(原文ママ)捉えらえる(原文ママ)ものではなく「苦しみの総称」だからだと私は考える。
単なる年齢や属性でとらえられない、としつつなぜか性別という属性をきっちり利用しております。ではなぜ性別にこだわるのですか?心の底から理解できません。なんで男性の引きこもりは救済されている前提なんですか?なぜ女性だけ見過ごされていると考えるのですか?
例えば、女性には家事手伝いとして見られることから、統計には載らないが苦しんでいる方もいらっしゃるという主張自体はとても重要だと思います。しかしながら、それを男性が聴いてどうすればよいのでしょうか。弱者決定戦をやりたいわけではありませんが、男性も社会での働きを求められるプレッシャーがあるわけです。お互い気づけない点があるので、それをしっかり主張しあって、配慮できるところは配慮しましょうならわかるんですよ。そうして協力して配慮しあえるなら願ったりかなったりです。
しかし、現実はそうなってはいません。単なる属性でとらえられないと言いながら、女性への配慮が不足していると語られます。女性を救うために一方的に犠牲になれというのならお断りです。そんな女性の自立を妨げるようなことはしたくありません。
(9)セーフティネットの薄さや女性への偏見
主婦って現状日本ではほぼ女性限定のセーフティネットですよね?偏見は女性へのというより引きこもりへの偏見、もっと言えば休む人間に対する恨みが偏見を形成しているので、別に女性に限った話ではありません。日本で女性のセーフティネットが薄いと言ってしまえるのは純粋に尊敬しますね。あるいは、女性特有の偏見かもしれませんがそれは女性が人生の選択肢を複数持っているがゆえの贅沢な悩みでしょう。自由な人間は色々言われてつらいですね。
・まとめ
引きこもれるだけ甘い、恵まれているとは断固として言いません。人それぞれ事情がありますし、そんな奴隷の鎖自慢をしても何も解決しません。しかしながら、口を空けて無償の救済を待つだけでは何も解決しません。
一人の引きこもった経験のある人間として、適度に静観し、エネルギーが回復するまで信頼して待ち続けられる世の中になってほしいものです。もっと言えば、相手を慮り、そもそも引きこもらざるを得ないような穢れた環境が国内から消えてほしいものです。
[1] 代表的なものだといじめ、受験失敗、就職浪人、悪劣な労働環境での勤務など。